宇野常寛『遅いインターネット』

遅いインターネット (NewsPicks Book)

遅いインターネット (NewsPicks Book)

  • 作者:宇野常寛
  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: Kindle版
第4章の冒頭を引用したい。

わたしが今のインターネットに感じていることを、著者は実に的確に表現してくれているなと思った。

 現在のインターネットは人間を「考えさせない」ための道具になっている。かつてもっとも自由な発信の場として期待されていたインターネットは、いまとなってはもっとも不自由な場となり僕たちを抑圧している。それも権力によるトップダウン的な監視ではなく、ユーザーひとりひとりのボトムアップの同調圧力によって、インターネットは息苦しさを増している。
 一方では予め期待している結論を述べてくれる情報だけをサプリメントのように消費する人々がいまの自分を、自分の考えを肯定し、安心するためにフェイクニュースや陰謀論を支持し、拡散している。そしてもう一方では自分で考える能力を育むことをせずに成人し、「みんなと同じ」であることを短期的に確認することでしか自己を肯定できない卑しい人々が、週に一度失敗した人間や目立った人間から「生贄」を選んでみんなで石を投げつけ、「ああ、自分はまともな側の、マジョリティ側の人間だ」と安心している。
 これらはいずれも、「考える」ためでなく「考えない」ためにインターネットを用いる行為だ。ネットサーフィンという言葉が機能し、インターネットが万人に対しての知の大海として開かれる可能性は、つい最近まで信じられていたはずだ。しかし、もはやそれは遠い遠い過去のことのような錯覚を僕たちにもたらしている。

インターネットは単に便利なだけでなく、我々をもっと自由にしてくれる道具だったはずだ。

しかし現状そうなっていない。

物凄くシンプルに書くと、ハッピーになるためにインターネットを利用していたはずが、結果そうなっていない人が多いように思う。

特にTwitter上には、承認欲求、同調圧力、ヘイト、不法行為……有形無形の「嫌なもの」が集まっていて、それが皆の心をすり減らしている。なのにTwitterは既にインフラ化し、依存症化し、使うことが前提になって、心がすり減ることも前提になっている。何なんだろうと思う。

著者はTwitterやFacebookやInstagramやニュースサイトの圧力や空気を無視した、物事をゆっくりじっくり咀嚼して考えるためのネット空間を作ろうとしているようだ。

それが「遅いインターネット」なのだそうだ。

圧倒的に支持したい。

その意味では、Twitterだけでなくはてなブックマークも、インターネットを自由にするのではなく、正直に言ってその逆の作用を生んでいるように思う。

石を投げつける生贄を探す道具であり、100字で説明不足の石を投げつけ、それに対する反論はシステム上かなり困難という、見方によってはかなり凶悪なシステムである。

10年以上使ってきたはてなブックマークに対して最近どうも懐疑的なのだが、本書の主張にその答えの一端があるような気がする。