- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/10/17
- メディア: 新書
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個人的には、「目標管理制度=MBOの限界」という主張が気に入った。そもそも私は目標管理制度が極めて不完全な仕組みだと思っておりあまり好きではないのだが、著者はイノベーションの実現という観点から以下のように述べている。
イノベーションの実現という文脈で人事評価制度を検討した場合、まず真っ先に指摘しなければいけないのが「目標管理制度=MBO」の限界です。現在、MBOは多くの企業で採用されており、評価制度のデファクトスタンダードになった感があります。しかし、この評価手法は漸進的な改善活動の成果を測定するには適用できますが、「イノベーションの実現」のように不確実性を高度にはらんだ営みの測定には適用できません。
なぜならば、イノベーションは予定調和しないからです。
イノベーションは決められた手順通りではなく、行きつ戻りつしながら、本能的な予感に導かれる形で結果的に実現するものであることは、本書において指摘してきた通りです。このようなイノベーションの成立プロセスに対して、目標を事前に数値設定し、それを事後に評価するという目標管理制度の仕組みは極めて不整合で、むしろ弊害の方が大きいと思われます。なぜなら、組織の構成員すべてが、目標管理制度の枠組みで設定できる定量的な目標を設定し、その達成度合いによって評価されることになれば、イノベーションのような不確実性の高い営みにコミットする人材がいなくなってしまうからです。
ほぼ完全同意である。
私は実は目標管理制度のブームというか一般的に浸透している現状については、色々と言いたいことが山盛りなのだが、一つだけ述べるならば、変化の激しい情勢においては「予定調和」にしか私には思えない目標管理制度が、あたかも「従業員の自律的な活動」であるかのように位置づけられていることが好きになれない。
なお本書の巻末には、本書のアイデアとなった参考書籍が紹介されている。メジャーなものから初めて目にしたものまでバラエティに富んでおり、なかなか興味深い。