小林よしのり『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』

小林よしのりの著書は本と漫画どちらに分類するか迷うのだが、まあ絵より文字の方が多いぐらいだし、これまでの著書もbookのラベルをつけているので、今回も本として分類。

内容は、一言でまとめると「コロナは風邪」論である。

PCRが無意味、経済を回すことが重要、無責任に不安を煽る羽鳥のモーニングショーが(わたしは一度も観ていないが)無責任で害悪、自粛など不要、各国で置かれた状況が異なるなど、言わんとすることはわかる。

わかるけど、どうもしっくりこない点がある。

例えば、コロナを収束させるには結局、ワクチンを開発するか集団免疫を獲得するかしか無いと著者(および著者と対談した専門家)は説く。最終的には日本人のほぼ全員が罹患するしかないのだと。けど1億人が罹患したら、当初言われていた致死率1%だと死亡者は100万人に到達する。著者は感染者が少ないのに騒ぎ立てて云々と言うが、結局100万人が死亡して社会が耐えられるのかと問われると、わたしは耐えられないと思う。スペイン風邪だってヨーロッパの全人口が罹患したわけではない。

もうひとつ、コロナの場合(感染力が強いからなのか変異を繰り返すからなのかは知らないが)集団免疫が効果を発揮しないのではという話も聞く。

さらに、コロナは後遺症が重篤だという話も聞く。

自粛をやめて経済を回せという主張には概ね同意する。しかし仮に「コロナは風邪」だとしても、社会がコロナ以前に戻ることはないと思う。ソーシャルディスタンスは権利になり、自己責任で確保すべきものにもなり、濃厚接触や3密はリスクのあるものであり、21世紀の新たなマナーになると思う。小林よしのりの描写に書かれていたが、自説にこだわった結果、タクシーの車内でノーマスクで飛沫を撒き散らす小林よしのりのような人間は、はっきり言って老害思想者だと思う。

小林よしのりは「経済を回せ」と言う。わたしはそれに同意するが、タクシーの車内でノーマスクで飛沫を撒き散らす行為が許される未来は、もう戻ってこないと思う。それは先日起こった飛行機でのマスク騒動の2件からも明らかである。社会はあくまでソーシャルディスタンスを保ちながら経済を回すようになるだろう。