根本昌夫『[実践]小説教室 伝える、揺さぶる基本メソッド』

元編集者で、2002年からはカルチャーセンターなどで小説講座を開いている方。二人の芥川賞の受賞者を二人同時に輩出するなど最近有名だというのもあるが、友人が夫婦で著者の教室に通っているため名前を認識しており、興味があったので買ってみた。

優しい語り口で、あまりテクニカルに寄ったアドバイスではない印象。

小説というのは結局どこまで行っても本人次第、あと運次第で、周囲は支えたり伴走したりすることしかできないんだろうな。

本の中盤で小説の読みを幾つか披露していたが、村上春樹『海辺のカフカ』が3.11や9.11のメタファーであるという指摘はなるほどと唸らされた。思い返すと、村上春樹はかつてエッセイなどで何度か、自分は「政治的」な人間である、しかし別に投票に行ってどうこうとかデモで集団をアジったりする人間ばかりを「政治的」と呼ぶわけではない、ということを語っている。また3.11については『アンダーグラウンド』と『約束された場所で underground 2』という発売自体がNHKのニュースになり、わたし自身何度ともなく読んだノンフィクションを出している。そして3.11や9.11で受けた衝撃は(直接的ではないにせよ)小説の形を取って必ず出てくるだろうと何度も発言している。