探検家・冒険家はただただ活動的という印象を持つ方がいるかもしれない。
しかし21世紀の今になって探検家・冒険家を「やる」というのは、尋常ではない。そもそも探検・冒険すべきところが宇宙と深海を除けばほとんど残されていないわけで、探検家・冒険家として生きていくには「探検とは?」「冒険とは?」という振り返りが不可欠になる。したがって否応なく内省的になると思う。
また探検家・冒険家の現実的な食い扶持とは何かと考えると、それはもう、喋りか文筆しかないだろうなと。探検・冒険の費用はアウトドアメーカーやその生き様に共感した挑戦的企業からのスポンサードを受けて行くことができると思う(別の本によれば角幡唯介はスポンサーをほぼ使わないそうだが)。しかし日々の生活ということで言えば、それはもう地道にアルバイトをして稼ぐ他は、講演会、雑誌の連載、書籍の発売といったことになり、表現力、とりわけ文章力が必要になる。
さらには、吹雪のテントの中で何日も籠もるとなると、まあ読書ぐらいしかすることがない。
そう考えると、探検家・冒険家はけっこう本を読むのかなぁ……と漠然と思っていたのだが、角幡唯介はけっこうガッツリ読んでいる。
広い意味では書評ということになるのだが、彼の普段の生活の中で見聞きしたことや考えたことと連動して本の内容に迫っており、思った以上に読み応えがある。