『トライアングルストラテジー』@Switch

ファイアーエムブレムシリーズやタクティクスオウガシリーズに代表される、シミュレーションRPG・タクティクスRPG・ストラテジーRPGなどと呼ばれるジャンルのゲーム。この手のゲームは一言で書けば「将棋」である。プレイヤーは戦士や魔術師・弓使いといった様々な能力や特性を持ったユニットをマップに配置し、敵のユニットと戦っていくことになる。各ユニットは、移動距離や攻撃力・守備力・HP・特殊能力などを備えており、またマップには地形効果がある。

本作も上記の例に漏れず、戦士・魔術師・弓使い・騎士・ヒーラーなど様々な特性を持ったユニットを上手く操って戦うことになる。

タクティクスRPGとしても完成度は結構高いのだが、それ以上に良かったのが設定・ストーリーである。

本作は中世を思わせる架空の大陸を舞台とした物語なのだが、本作には3つの大国が存在する。高い製鉄技術を持ち家柄よりも実力や自由を重んじるA国と、三国の中で唯一塩湖を持ち女神様の下で皆が平等な宗教国家・B国、両大国に挟まれて翻弄されるC国の3つだ。主人公はC国の王家を支える辺境領主の跡取り息子である。C国自体、A国にもB国にも力では劣っている上、主人公はC国のトップでもなければ領主ですらない(領主の跡取り息子である)という絶妙に微妙な立場だ。A国とB国は30年前に塩鉄大戦という大きな戦争をやらかしており、今でも仲が良いわけではないが、現在は停戦中である。そして三国は、喧嘩ばかりせず手を取り合って発展していこうと三国共同で鉱山の採掘事業を進めている――というアウトラインである。でもまあ、当然ながら三国での採掘事業など上手く行くはずがなく、主人公は各国・各人の思惑に翻弄され、様々な選択を否応なく突きつけられることになる。

さて、ここで面白いのが本作の「信念」というパラメータだ。主人公にはMoral(モラル)、Benefit(利益)、Freedom(自由)という3つの信念のパラメータがある。そして会話での選択肢、意思決定、戦闘時の行動、買ったものや売ったもの、育てた部下のタイプなどから、この3つの信念が高まっていく……のだが、1周目プレイでは、プレイヤーは今、主人公の信念がどのように高まっているのかを確認することは出来ない。自分の選択肢などから推し量ることができるだけである。

さらに面白いのが、主人公は大きな意思決定をする際、独断で決めることはせず、腹心の部下の多数決(信念の天秤と呼ぶ)で決めるという家訓のようなものがある。選択肢自体がけっこう悩ましい上に、部下にも部下なりの考えがあるので、この選択自体がなかなか思い通りには決まってくれないのである。

例えば、詳細はぼかすけれども、主人公の属するC国は早々に国としては崩壊状態になり、C国はA国の属国のような扱いになる。そして命からがら落ち延びた王子様を匿っていたところ、A国から「王子様を引き渡せ」と言われるのである。主人公にとって王子様は、単なる主従関係を超えた親友のような間柄でもある。物語の世界では当然、C国への忠義や王様や王子様への忠義があるため、引き渡すことはしない。しかしリアルな勢力争いにおいては、既にC国は崩壊状態にあるわけで、引き渡しを拒んで辺境領主たる自分たちすら滅ぼされて良いのかという話が出てくる。まあ悩ましい話ではあるが、わたしとしては親友であり君主でもある王子様を引き渡すのは正直ちょっと厳しいので、「引き渡さない」という選択をしようとしたのだが、ここから更に面白くなる。先ほども書いたとおり、重要な決議はわたし個人ではなく、信念の天秤(多数決)で決められるのである。一応、腹心の部下7名に対して説得(今回で言うと王子を引き渡さない側に投票しようとする説得)を仕掛けることができるが、その説得に応じてくれるかどうかはわからない。

今回のわたしの場合、攻略サイトなどは見ていないため想像になるが、プレイヤーとしての普段の言動が、Moral/Benefit/Freedomのうち、おそらくMoralが低かったのだと思う。わたし自身、どちらかと言えばFreedom優先、Benefit第二優先、Moral劣後という性格で、無邪気に選択肢を選ぶとMoralが低くなるような気がする。つまり普段からMoralに欠けた言動をしておきながら、こんな時だけ良い子ちゃんぶってMoralの高い選択肢に部下を誘導しようとしても、上手く行かないという話である。結果、わたしは部下の説得に失敗し、C国を滅ぼした憎きA国に、君主でもあり親友でもある王子様を差し出すという、非常に情けない選択をせざるを得なくなったのである。

で、こうした選択の結果によって、ストーリーが変わったり、加入する仲間や離脱する仲間が変わっていくのである。

このあとも、かなり色々な選択が、ヒジョーに悩ましいものであり、めちゃくちゃ面白い。

これ続編を出してくれないかなー。

最後に一点だけ気になった点を書くと、わたしはどのゲームでも基本的に難易度Normalを選ぶのだが、フツーに進めると推奨レベルとの乖離がかなり高いのと、金が不足して必要な戦力強化やアイテム購入が追いつかず、結果、メインストーリーではなく「想定バトル」という練習課題みたいな戦いでのレベ上げを数十回やる羽目になった。「この装備一式を作りたい」などのコダワリによるレベ上げなら良いんだが、ストーリーをクリアできないからレベ上げするってのは、正直、廃れてほしい悪しき時間稼ぎだとわたしは思うわけです。事実かなり廃れているのだが、本作ではあったなあ。