竹本真+猪乙くろ『前略 雲の上より』全7巻

物凄く面白い漫画を見つけてしまった……!

出世に憧れるごく普通の若手サラリーマンである主人公が飛行機マニア(空港マニア)の上司から半強制的に薫陶を受け、否応なく空港の魅力にどっぷり浸かっていく、という物語構造である。

わたしが特に気に入ったのが、課長が、飛行機マニア、その中でもおそらくレアだと思われる空港マニアであるという設定である……と書いたが、実際どうなんだろう。鉄道マニアは、乗り鉄(実際に乗るのが好きなタイプ)、撮り鉄(電車の写真を撮るのが好きなタイプ)、駅弁が好きなタイプ、時刻表が好きなタイプなどに分かれると聞いたことがあるが、飛行機の場合、どんなマニアが存在し、空港マニアがどの程度の勢力を占めているのかは正直よくわからない。本作では一応、空港写真マニア、ある特定の機種マニア、フライト中に寝るのが一番よく寝れるという睡眠マニア、LCCマニアなど、ごく普通の顔をしてそこら中に様々なタイプの飛行機マニアがいることは確認済みである。

あと書きながら思い出したのが、知人で一人、飛行機がどこをどう飛んでいるのかリアルタイムで見られるサイト?アプリ?を毎日数時間見ながら、併せてパイロットの無線を聴いているという人がいた。その人はフライトレーダーマニア、飛行機無線マニアと言うんだろうな。ただ、その人は何故か「自分はマニアでも何でもなく、ただごく普通の人間が、毎朝5時前に起きて2時間ほどフライトレーダーやパイロットの無線をチェックして、行き帰りの通勤中もチェックして、帰宅後に酒を飲みながら数時間チェックして、あと、仕事が暇になった時もこっそりチェックしている程度なんだ」と力説していたが、誰がどう見てもマニアだと思ったり。

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閑話休題。わたしは最初の会社では仕事柄、行きと帰りをそれぞれ1回とカウントするならば平均して週2〜3回ぐらい飛行機を利用していたが、空港なんて都心部から遠いし、大して何もないし、待ち時間が長いし、飛行機の中も狭いしけっこう揺れるしで、何も楽しいものではないと思っていた。しかしそれは、わたしが楽しみ方を知らなかったからのようだ。そもそも展望デッキに出たことなんて一度もなかったし、空港の中を探索したこともなかった。意外なところに意外な楽しみ方があるということを教えてくれる作品だ。

本作が売れまくる未来はあまり見えないが、いやでも売れまくってくれないかな。こういうマニアが気持ちよく生存できれば、一人ひとりが幸せで、お金も回って社会も幸せになると思う。

極私的に大推薦の漫画……だったのだが、7巻で最終巻。こんなに面白い漫画よくそんなに簡単に打ち切りにできるな講談社さんよぉ。