樫木祐人『ハクメイとミコチ』10巻

身長9センチメートルほどの妖精チックな”こびと”が、旅人の街と呼ばれるマキナタで日常生活を送る様を描いた作品。

もう100回近くは読み返しているが、何度読んでも飽きないし、作品や自分自身への発見があり、とにかく愛おしい。

本作の特徴は……何だろう、この世界には人間は出てこないが、たくさんのこびとや動物が生活しており、その多様性というか無国籍性がまず挙げられる気がする。そして動植物や食材は実物大(というのも変だが)だが、イタチを初めとした哺乳類は知性や言語を獲得しており、二足歩行をしている者もいる。一方、鳥類は独自の言語を操り、魚類は陸生と水生で違うからなのか基本的に言葉は使わずただの食料って感じ。爬虫類と両生類はペット的な扱いだったり、哺乳類と同様に知性と言語を獲得していたりと種族によって違う。この辺はまあ厳密さというよりは直感ベースで色々と書き分けられているのかな。なお昆虫類は基本的にこびとや哺乳類と同等の知性を持っているが、言葉が違うらしい。ハクメイやミコチと仲の良いコクワは虫語翻訳の仕事をしているため流暢だが、ミツバチは片言である。

道具やものづくりに対するこだわりも良い。ハクメイは大工職人であり、しかもこの10巻では大きな変化があった。そしてミコチは料理や服飾はプロ級。インフラとしても鉄道やロープウェイなどがあり、基本的には中世か1900年あたりをベースに、最後は作者の直感で登場させるかどうかを決めているそうだ。

またこれはハルタの作品に共通するのだが、背景が相当緻密に書き込まれている。

これらがもう全て丁寧な仕事で、本当に感謝しかない。

もっともっと描き続けてほしい。