『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』@Netflix

こうの史代の原作漫画『この世界の片隅に』を片渕須直監督により映画化、さらにそれを長尺版として作り直したのが本作である。

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もうね……ヤバい。

涙が出るとかそんなレベルじゃない。途中から嗚咽。

わたしは元々こうの史代の作品が好きで、この作品が好きで、広島出身で。

のんの演技も凄まじくて。

お国は戦争をしていても、日々の生活はあくまで静かで、したたかで、そして平和で、でも泥団子が強い力で握り潰されるように現実は綻びを見せ、そして空襲で酷い現実に変わり、さらには原爆で現実そのものが一瞬で破壊されて。

そういう色々なものが合わさって、特異点を超えて、何かの感情が閾値を超えた感じ。

傑作です。紛れもない傑作。わたしは長尺の映画があまり好きではないのだが、これは長尺にした意味がある。

付言しておくと、わたしは元々涙もろい方だ。いや、元々というとアレか、小説や漫画、アニメ、映画などを浴びるように鑑賞する中で身につけた特性と言って良いと思う。後天的かもしれないが、だから本作に限らずわたしは色々な作品を見て泣いている。批評的な鑑賞は極力したくないし出来なくて、世界観や登場人物に容易く感情移入する方だ。だから悲しくなくとも泣くときは泣くし、ちょっとしたエピソードでも泣くし、コメディパートでも泣く。下手すれば「泣くために観ている」という向きすらあるので、多分この涙は「感動」ですらないのだろうなと時々思う。あえて言えば「感情の爆発」だ。爆発したいからフィクションを手に取るのだろう。