『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』@PS4

略称P5R。元々は『真・女神転生』シリーズ(通称メガテン)というものがあり、その外伝という形でペルソナシリーズが生まれたという経緯がある。しかしながらペルソナシリーズは、今となっては日本を代表するゲームシリーズと言って良いだろう。

元々のメガテンシリーズは、ややダークかつスケールが壮大である。東京を舞台としながらも神話めいた話を意図的に取り入れていたり、ある日突然街に悪魔が溢れ出して既存のことわりが大否定されて人間社会が大混乱・大崩壊したりして、主人公は否応なくその変化に巻き込まれる。で、もちろんシリーズによって少しずつ設定や展開は違うものの、結局のところ、世界の行く末をどうするか、選択を迫られる……みたいな展開が通常である。これは俗にロー・カオス・ニュートラルと呼ばれ、要するに世界を秩序寄りの世界にするか、悪魔が溢れてても良いだろう混沌バンザイという世界にするか、みたいな「神の視点」での究極の選択を迫られる。ゲームレベルも比較的シビアだ。まあファンとしてはこの辺は全て「魅力」なのだが、世界観が先に立ち、初見ユーザーには正直とっつきにくいところもある。そこで、メガテンシリーズのコアなゲームシステムの一部を踏襲しつつ、よりキャラクター性を強め、登場人物の成長にスポットライトを当てることにした。いわばジュヴナイルっぽくさせたのが、このペルソナシリーズである。

もう少し続けると、ペルソナ1と2は正直、生みの親であるメガテンの影響が色濃く、ジュヴナイルとは言っても、かなりダークだった。要するにキャラクター性そのものは強めたが、ダークなところやシビアなゲームシステムは健在だった。これはこれでわたしを含めたファンは狂喜したが、とっつきにくさは微塵も変わっていない。そこで3では、ポップな雰囲気にグッと寄せてみたところ、大ブレイク。関連ゲームやメディアミックスも大成功し、今や生みの親であるメガテンシリーズを超える知名度や人気を博すようになった……と、かなり端折ったがこんな感じがペルソナシリーズである。

さて、その最新作が『ペルソナ5』なのだが、この『ペルソナ5』に大幅なエピソードの追加やゲームシステムの調整を行い、完全版として売り出したのが、本作『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』ということになる。

端折ったけど長いね。

で、これが凄い。元々のペルソナ5もかなりのボリュームだったが、改めてプレイして損なしと呼べるほどの大増量がなされており、ゲームシステムもさらに遊びやすくなっている。大傑作と言って良い。

大推薦!

余談

Amazonのレビューを見ると「DLCレベルの追加しか為されていないのにフルプライスだ!」と言って文句をつけている人が多いのだが、わたしはそうは思わない。細かなゲームシステムの調整も凄いレベルだと思う。

個人的には、敢えて本作にケチをつけるとするなら、「早くペルソナ6作ってよ!」という点の方が大きい。ゲームは年々「大作化」しており、映画のようなハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルになりつつある。資金調達力の高い海外の一部のゲームメーカーが、恐ろしい作り込みでFPSやオープンワールドゲームを輩出している。その流れについていけている日本のゲームメーカーは皆無と言って良い。その中で、アトラスは「ペルソナシリーズで生み出したキャラや世界観を徹底的に使い倒す!」という方向に、ペルソナ4を発売したあたりから明確に舵を切った。ダンスゲームを作ったり、格闘ゲームを作ったり、アニメ化したり、はたまた演劇まで作っちゃったりして、いわばサイドビジネスというかIPコンテンツビジネス(知的財産 / Intellectual Property)を積極展開して、大作化するゲームの製作資金を集めているのだろう。そもそも完全版も、IPコンテンツビジネスの流れを明確に踏襲しているし、先日発売した『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ』もその流れだ。わたしはこの流れを決して否定しない。魅力的なコンテンツであれば、わたしのようなファンはどんどん金を出すだろう。ただ、それはペルソナシリーズを真剣に作っていることが前提だ。コーエー(もう光栄とは書けない)のウィニングポストシリーズのような、過去のシステムで延命するだけの下らないゲームシリーズにはなってほしくない。