インキュベ日記

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『バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』Blu-ray BOX

中国の動画配信サイトが『七人の侍』のリメイクを製作することになる。超大型プロジェクトであり、待遇もギャラも破格なのだが、オファーの前提は「絆を深めるため3ヶ月間シェアハウスで共同生活を送ること」という一風かわったものであった。役所広司のみ後から合流することになるが、他の遠藤憲一・大杉漣・田口トモロヲ・寺島進・松重豊・光石研の6人はオファーを受け入れ、シェアハウスでの共同生活を先に始めることになる。しかしこの6人は実は10年前に『バイプレーヤーズ』という映画を共に作ろうとし、そして意見のぶつかり合いの結果、完成させられなかったという過去がある……というプロローグの、テレビ東京の深夜ドラマ。

かなり、異色、と言って良いだろう。

そもそも皆が実名役で登場する点や、いわゆるバイプレーヤーばかりを集めている点。「シェアハウス」での共同生活というシチュエーションコメディのような、それでいて「あいのり」や「バチェラー」を意識した独特の設定。他にも探せば色々あるかもしれない。

テレビ東京は攻めてるなあ。

鈴木望『青に、ふれる。』1巻

青に、ふれる。 : 1 (アクションコミックス)

青に、ふれる。 : 1 (アクションコミックス)

太田母斑による青いアザを持つ女子高生と、相貌失認により他人の顔を判別できない男性教諭の出会い。

男性教諭は、顔を判別できないため、その人の髪型や持ち物や制服の着こなし・声などをめちゃくちゃ細かくメモしている。しかし男性教諭は大事なメモの書かれた手帳を落としてしまうのである。たまたま手帳を目にした主人公は、自分の欄にだけ何も書かれていないことを発見し、先生が自分=アザであるという認識をしているため特徴をメモする必要がないという失礼さや、アザであることを敢えて記録しない偽善的な態度にいたく傷つき、抗議に向かう。しかし男性教諭は、実は相貌失認で、アザのことも認識しておらず、その青い部分を「オーラ」だと認識していたというトンデモな回答を行う。自分のアザを「オーラ」だと勘違いされたという妙なエピソードと、教諭の秘密(相貌失認)を知ってしまったことで、主人公は何となくその男性教諭のことが気になってしまう……とまあ、こんな感じのアウトラインだろうか。

一旦横道にそれます

さて、わたし自身の記憶を思い返すと、小学校時代のクラスメートに太田母斑(かどうか正確には知らないが)と思われる男子が一人いた。ただ、我々は決して彼のアザを馬鹿にしたりはしなかったように思う。そして友達同士の会話の中で話題にしたこともなかった。少なくともわたしはそうだ。わたしは(自分にも色々コンプレックスがあるので)その辺はかなり自覚的であり、普段は「口から生まれた」と怒られるほどペラペラ喋っていたけれど、その辺は慎重に行動してきたつもりだ。だが、ちょっとした事柄で囃し立てる馬鹿は通常どこの世界にもいる。どんな思いで、わたしだけでなく我々全員がアザについて一切口にしなかったのか、今となってはよくわからない。実はクラスの担任に代表される大人が厳しく言い含めたのかもしれないし、実はわたし以外の人間はちょいちょいからかっていたのかもしれない。

いずれにせよ、少なくともわたしの場合、彼に対する態度は同情とも優しさとも違っていた気がする。あえて言うと……何だろう。わたしはあなたのアザなんて気にもしていないし気づきもしていないよという態度を取り続けることが、子供ながら、自分なりの「マナー」であり、「恥ずかしくない一人の人間としての振る舞い」だったのかな、と思う。そうした外見を取り上げて一度でもからかうことは絶対にしてはならないとわたしは思っていた。

事実として、単に友達として付き合っている中で、他人の顔のアザの有無など、特段気にすることは起こらないわけである。

ただ、こちらが気にしていなくとも、そして本人は何も言わなくとも、やはり本人は強いコンプレックスを持っているだろうなと思うことはあった。それがわたしの思い込みなのか、事実そうだったのかは、当時から30年経った今となってはもうわからない(わたしは小学校卒業と共に広島から大阪に引っ越してしまったしね)。ただ、今でも忘れられない瞬間がある。集合写真……じゃないな、クラス全員ではなかった、たぶん遠足だったか外で遊んだか、あるいは卒業式の類だったか、とにかく友人何人かで記念に写真でも撮るかとなった時があって、まあそういう時、男子は大体ワチャワチャして「ハイ・チーズ」となるまでに時間がかかりがちである。その時もワチャワチャしてたのだろう、しかしまあ何とかワチャワチャも収束して、いざ写真を撮るタイミングで、もはや誰も騒いでいないのに、彼はもう一度「なんだよ~」という感じで右を向いて、彼だけが正面を向いていない写真が出来上がったことがあったのである。もう言うまでもないと思うが、彼のアザは顔の右半分にある。わたしはその時の首の振り方に物凄く違和感を感じたのである。わざとらしいというかね。

実はこの話には前段階があって、林間学校だか修学旅行だか、これも詳しくは全く覚えていないのだが、皆で風呂に入ったことがあり、この風呂場での写真も同様に右を向いていたのである。まあそもそも風呂場のようなプライベートな場で写真を撮ること自体、今では子供の人権云々みたいな話になりそうだが、当時は男子の場合、皆で浴槽に浸かって、ワチャワチャしながら「ハイ・チーズ」とする写真は普通に撮られていたし、個人的に何の違和感も感じていなかった。ただ、ハイ・チーズの中で一人だけ右を向いているというのはやはり違和感があり、本人は気にしているんだなとぼんやりと思っていたところで、また彼は右を向いたのだ。

本書の内容に戻って

本作の主人公は、太田母斑があることを、全く気にしないように振る舞う。友達との軽口でも、普通にアザの話をする。誰かがボソッと陰口を言っても、全く気にしないように振る舞う。しかし、これはかなり逆説的な振る舞いで、他人の振る舞いに傷ついたということを誰にも見せない、それどころか自分にも見せない、という最後の抵抗なのだ。本人は実のところ、深く傷ついているのだ。

わたしは本作を読んで、この「傷ついてなんていないんだよ」という主人公の振る舞いに、小学校時代の友人の姿を重ね合わせた。そして「気にしてなんていないんだよ」という30年前のわたしの振る舞いをも思い出させた。

つまり本作は強烈な印象を読後のわたしに残したのである。

太田母斑は今、レーザーでアザを消すことができるそうだ。主人公は友人にレーザー治療を薦められ、断っている。アザに負けるわけにはいかないと。しかし普通に考えると、アザが気になるなら、消してしまえば良いのである。そこに勝ち負けはないし、これは整形云々の倫理観とも違う話である。アザに勝ち負けという考えを抱いてしまっていること自体、強いコンプレックスの表れなのだ。

レーザー治療の技術は、わたしの子供の頃はどうだっただろう。治療できるなら、彼は喜んでしただろうか。

万人にとって、この何とも言えない痛切さが伝わるのかどうかはわからない。

しかしわたしは言いたい。これは極私的傑作である。わたしの心の、どこか深いところを痛切に揺さぶる作品である。

余談

押見修造『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』に通ずるところがある。

incubator.hatenablog.com

佐々大河『ふしぎの国のバード』6巻

ふしぎの国のバード 6巻 (HARTA COMIX)

ふしぎの国のバード 6巻 (HARTA COMIX)

Wikipediaの紹介文を丸々引用したい。

19世紀に実在したイギリスの女性冒険家イザベラ・バードの著書『日本奥地紀行』を下敷きに、主人公のイギリス人女性イザベラ・バードが通訳ガイドの日本人男性・伊藤鶴吉と共に、横浜から蝦夷地へと旅する姿と、旅先で出会った明治初期の日本の文化や人々をフィクションを交えて描く。史実においてバードが日本を訪れたのは46歳のときだったが、本作においてバードは若い女性として描かれている。また、日本語を理解できないバードの視点に立って描かれており、日本語による会話は、ぼかされた表記として表現されている。

まだ欧米化されていない昔ながらの日本が描かれており、我々21世紀の日本人から見ても、当時の日本は「異文化」である。

爆発力のある作品ではないが、凄く面白い。

堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』24巻、古橋秀之+別天荒人+堀越耕平『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』7巻

僕のヒーローアカデミア 24 (ジャンプコミックスDIGITAL)

僕のヒーローアカデミア 24 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミア ILLEGALS- 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミア ILLEGALS- 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

個人的に最も続きが楽しみな漫画のひとつがヴィジランテである。要するに本家の面白さをスピンオフが超えてしまっている。通常ほとんど有り得ないことなんだけどね。

本家のヒロアカの方も、最近また面白さが戻ってきている気がするんだけども、24巻は丸々ヴィランしか描いてないとか、どうもピントがズレてんだよな。

遠藤達哉『SPY × FAMILY』1巻

SPY×FAMILY 1 (ジャンプコミックス)

SPY×FAMILY 1 (ジャンプコミックス)

ある一流スパイが、(ターゲットに近づくため)子供を名門校に入れる必要があるっちゅーことで、孤児院の中から頭の良さそうな子供を見繕って養子にしたら、その子供は他人の考えが読み取れる能力者だった。しかも名門校に入るには奥さんも必要だと言うので、たまたま知り合った女性が今度は暗殺者だった……という、まあ訳のわからん疑似家族なわけだが、これが面白いんだな。テンポが良いのかな。

昨日のチェンソーマンでも言ったが、やっぱりジャンプは奥が深い。

本作も面白いし、チェンソーマンも面白いし、呪術廻戦も面白い。

つってもチェンソーマンや呪術廻戦は荒々しい感じだが、この作品は何とも言えぬ安定感がある。

藤本タツキ『チェンソーマン』3巻

チェンソーマン 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

チェンソーマン 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ジャンプらしからぬ、独特の荒々しい絵柄と展開。

主人公も今のところ、絶妙に「感情移入」させてくれない。馬鹿すぎて。絶妙。

今、マガジンで読みたい作品はあまりないが、ジャンプはあるな。買っても良いぐらい。何だかんだでジャンプは奥深いね。

今野敏『棲月 隠蔽捜査7』

棲月―隠蔽捜査7―

棲月―隠蔽捜査7―

個人的に今ハマっている隠蔽捜査シリーズの第7弾。

第7弾は、サイバー犯罪。サイバー犯罪自体、本来的には所轄で取り扱うようなものではないのだが、大森署で発生した事件と大いに関連があるため、原理原則に則って主人公は越権行為的に捜査を強行する。そのことで毎度ながら警察組織内での軋轢を生んでしまうのだが、本人はどこ吹く風……と、このあたりはいつもの話である。

もうひとつ、降格人事を食らった主人公の「禊」が終わりに近づいてきたようで、異動の噂話が活発化する。普通は降格人事を食らったら辞めるのだが、降格されても淡々と成果を出し続けており、「禊」が終わったと判断されたようなのである。そうなると周囲は次の異動先が気になるわけだが、主人公はもはやある種「泰然」としており、異動先など殆ど気にもかけていない。この辺りの構図は非常に面白いなあ。

補足

続きモノなので以前に書いた本シリーズの紹介を、初見の方のために再掲しておく。

本作はいわゆる警察小説である。なので事件が発生して解決する推理ドラマと、警察組織の中でのドラマ、そして主人公の家庭内ドラマ、この3つのドラマが基本的に平行して走ることになる(最初の2つだけのこともある)。しかし本作は他の多くの警察小説と異なる点があり、主人公は警察官と言っても現場の刑事ではなく、キャリアである。警察官僚とも呼ばれる上層部のエリートなのである。さて、ここからはネタバレを含むので簡単に書くが、主人公は元々キャリアであることに大きな誇りと使命感を抱いており、順調に出世もしてきた。だが、自身の信条である「原理原則」にこだわった結果、1巻のラストで大森署の署長という降格人事を受けてしまう。しかし主人公は、独自のキャリア信条に忠実に、たとえ降格されても公のために働き続けるという選択をし、降格人事を受け入れる(通常は皆この時点で辞める)。そして降格先の大森署で、辣腕を振るい始めるのである。