インキュベ日記

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奥泉光『ビビビ・ビ・バップ』

ビビビ・ビ・バップ

ビビビ・ビ・バップ

SFとジャズの融合……と聞いただけで、かの傑作アニメ『カウボーイ・ビバップ』を思い出して即購入。結論としては「まあまあ」という印象。カウボーイ・ビバップの方が個人的には面白かったのだが、こっちの方が好きな人も多いだろう。

なお奥泉光は、文学理論や文体に強いこだわりを持っていることで知られ、本作でも冒頭から『吾輩は猫である』をモチーフに色々やっている。それはまだ良いのだが、文中の所々で、数ページから十ページ程度に一回は「そんなこんなで、フォギー(主人公の相性です)は○○なのでした」といった「です・ます調」の気持ち悪い俯瞰的文章が出て来るので、その度に作品世界に埋没していたわたしは無理やり現実世界に引き戻されてしまう。文体に強いこだわりを持つ作者のことだから、これも狙いなのだろうが、わたしにとってはこの狙いは端的に「不要」だなーと思った。

井上堅二+吉岡公威『ぐらんぶる』1〜8巻

伊豆大学という海沿いの大学に進学してダイビングショップ「グランブルー」を営む叔父の家に居候することになった主人公が、グランブルーに入り浸っているダイビングサークル「Peek a Boo(ピーカブー)」のメンツに見初められ、半強制的にダイビングサークルに入る……というプロローグである。と言ってもダイビングの描写よりは飲み会の描写の方が圧倒的に多い。というか大体へべれけになるまで飲んで裸になっている。わたしもここまでではないが多少は羽目を外した経験がある。今は記憶をなくすほど飲むことは皆無だが、まあそういう経験もあって良かったんだろうなと思う。

なお、わたしは最近この漫画に激ハマりして、何度も何度も読み返している。もう10回は読んだだろうか。面白くない漫画を何度も読み返すことはしないが、仮に面白くても何度も読み返すとは限らない。本作は、とにかくおバカで、何度読んでも笑えて、そして眩しい。そしてわたしも、ここまでではないが、多少は「何もないおバカな青春」とやらを過ごしてきたことを思い出し、明日への活力がみなぎるのである。いやマジで。

木多康昭『喧嘩稼業』8巻

喧嘩稼業(8) (ヤングマガジンコミックス)

喧嘩稼業(8) (ヤングマガジンコミックス)

とにかく「勝てば良い!」という、スポーツマンシップとは無縁の格闘技漫画。でも生きるか死ぬかの場面で、500億円とかの優勝賞金が見えている中で、スポーツマンシップもないだろう(少なくともスポーツマンシップに則った人ばかりではないだろう)というのも事実。この作品では、いわゆる暗殺者のような裏世界の強者を集めており、そうしたダーティーな戦いが起きやすくしている。

まあイチ高校生たる主人公が最もダーティーで、勝ちに貪欲なんですがね。

そこが面白い。

横田卓馬『背すじをピン!と』10巻

最近集中的に読んでいる「ダンス漫画」のひとつ……だったんだが、完結。もう少し続けても良かったような気もするが……まあダンス漫画が増えてきていることもあるし、仕方ないかなー。あとは『ボールルームへようこそ』と『ダンス・ダンス・ダンスール』と『絢爛たるグランドセーヌ』に期待しよう。

佐藤秀峰『Stand by me 描クえもん』1巻

Stand by me 描クえもん 1巻

Stand by me 描クえもん 1巻

未来から来た自分だと名乗るハゲでデブなおっさんが「漫画家を辞めろ。そのまま続けたら自分みたいな腐った親父になっちまうぞ」と忠告する、という冒頭から始まる作品。

漫画家になれば報われると信じて辛い現実を何とか乗り切っている主人公は、いきなり目の前に現れた変なおっさんの言うことなど当然聞き入れたりはしない。しかしこの変なおっさんは、自分しか知らないようなことを言ってのけたり、本当に未来を知っているとしか言いようのない精度で言い当てたりする。そしてそのまま居候するのである。全体的に陰鬱だが、その焦燥感を持ちながらも何とか現実を変えてやろうともがくという構図は、作者の代表作『ブラックジャックによろしく』に通ずるところがある。

なお、主人公の行動によって、おっさんの禿頭に少しだけ毛が生えるなど、未来が変わる様が暗示されている。主人公が、おっさんの意見を聞いたり聞かなかったりしながら現実を変えていき、その変化がおっさんの体に表れる……という感じになるんだろうな。

宮内悠介『スペース金融道』

スペース金融道

スペース金融道

人類が宇宙に進出し、アンドロイドが完全に実用化されて人間と(ほぼ)同じように生きている近未来を舞台とした宇宙的規模の「ナニワ金融道」が本作である。主人公は凡庸かつ常識人の金貸しで、優秀だが非情かつエキセントリックな先輩とコンビを組んで金を取り立てる、という構図が既にナニワ金融道を意識しているが、まあタイトルからしてナニワ金融道の意図的なオマージュである。

内容も、アンドロイドはともかく植物や人工知能からも金を取り立てるなど、テンションは終始「B級」のそれである。しかしそのバカバカしさが何とも言えずおかしい。

なお、宮内悠介という人は、別作品で日本SF大賞の受賞をしているが、直木賞・日本推理作家協会賞(短編部門)・山本周五郎賞・芥川賞・三島由紀夫賞などの候補にもなっており、SFに限らず幅広く活動しているという印象。最近こういう人が増えたよなー。

石田スイ+十和田シン『東京喰種トーキョーグール:re[quest]』

東京喰種トーキョーグール:re[quest] (ジャンプジェイブックスDIGITAL)

東京喰種トーキョーグール:re[quest] (ジャンプジェイブックスDIGITAL)

今、最も面白い漫画のひとつである『東京喰種トーキョーグール』のノベライズ版、その第四弾。第四弾からは続編の「:re」としてノベライズされているが、基本的な内容や方向性は変わっていない。相変わらず面白い。

というかノベライズを担当する十和田シンという人は、本作やNARUTOのノベライズなどが主な実績のようだが、読んでいて文章に「違和感」が全然ない。この人のオリジナルも読んでみたい。