石川善樹『考え続ける力』

『問い続ける力』の続編。

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前著『問い続ける力』は、「考える」ためには「問う」ことが不可欠だという前提があったが、本書は「考える」ことそのものに深堀りしていくという前提で本書が名付けられている。ただし考え続けることの対象はあくまで「創造」である。

内容に入るが、大きな概念は前著を踏襲しているものの、まず「却来」すなわち「ある物事を新しくし、質を高めた後に、また古くすること」こそ日本が世界に誇る創造のスタイルではないかと定義している。また古くするというのが若干わかりづらいかもしれないが、要するに、アップデート→アップグレード→原点回帰というサイクルを踏むことである。「創造」というといきなりゼロベースで何かを生み出さねばならないのではないかという切迫感のようなものがあるとわたしは思うが、そうではないことを示してくれている。また、日本人と「大局観」の関係性や相性についても触れており、これがまた刺さった。わたしは加齢に伴って細かな整理・分類・分析をする前に大局観≒直感で見えることが増えている。良い点・悪い点どちらもあると思うが、それが経験なのだと思う。

こうした日本人ならではの創造・却来・大局観の関係性について触れた後、考え続ける・創造し続けるには極力少人数で動くことが必要で、またそれができている人の定義は、全く異なる領域で複数の成功を成し遂げた人である(たまたまではない証明)という、考えることや創造することに対して、さらに著者の考え方が示される。この点、多くの本では「皆でブレストして発散して〜」といった穏当な話に着地することが多い中、わたしは実態に合っていると思って好感を持った。

で、そのあとは前著と同じく、全く異なる領域で複数の成功を成し遂げた人と対談して、「考えるとは何か」「イノベーションを起こすには」「イノベーションと入口・出口の関係」「イノベーションと基礎研究」などなどのテーマを深堀りしていく。対談相手は安宅和人、濱口秀司、大嶋光昭、小泉英明、篠田真貴子の5名だが、安宅和人と濱口秀司の対談は物凄い衝撃で、前著よりさらに面白く感じた。

おすすめ本だが、できれば『問い続ける力』から読んでほしいかな。対談が大半で、読みやすいとは思う。