田素弘『紛争でしたら八田まで』5巻

令和版『MASTERキートン』、もしくは令和版『パイナップルARMY』。

フリーの地政学リスクコンサルタントとして、紛争に発展しかねない民族間・人種間・地域間などのトラブルを解決する主人公・八田百合を主人公とした作品なのだが、主人公のバックグラウンドが軍隊じゃないというのが今っぽい。

小出もと貴『iメンター すべては遺伝子に支配された』1〜2巻

iメンターという、人の職業適性や寿命や身長の伸び、果ては結婚の相性度までわかってしまうというアプリが実装化された未来の物語。

人は相性90%を超える相手を見つけるために出会いを繰り返し、適正の高い仕事に就き……と、プロセスと結果が逆しているように見えるのだが、本人たちはiメンターに慣れ切っており気づかない。しかしiメンター自体、政府が運用しているもので、しかも実験と称して数値に介入したりもしていて……という展開。なるほどこう来たか。

実はこの作者については『サイコろまんちか』という大傑作があるので、基本的な信頼感がある。『iメンター』は当然読むが、『サイコろまんちか』も続きを描いてほしいなあ。

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山田芳裕『望郷太郎』4巻

望郷太郎(4) (モーニングコミックス)

望郷太郎(4) (モーニングコミックス)

  • 作者:山田芳裕
  • 発売日: 2021/03/23
  • メディア: Kindle版
大寒波に襲われて文明社会が壊滅した500年後、大富豪の主人公は自分だけ奇跡的にコールドスリープから目覚める。世界はほぼ原始時代に戻り、人間もほとんど存在しない状況だったが、場所によっては集落のようなものもあり、通貨のようなものもあり、しかし同時に奴隷や格差も生まれている……と、なかなか予断を許さない展開の漫画。

この作者の描く漫画はスケールがでかくて、ほんと面白いな。

松本直也『怪獣8号』2巻

怪獣8号 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

怪獣8号 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:松本直也
  • 発売日: 2021/03/04
  • メディア: Kindle版
正体不明の怪獣が定期的に現れては街を襲うというパラレルワールドで、主人公は駆除された怪物を片付ける仕事についていた……が、怪獣を駆除する仕事への憧れを抱き続けてきた。しかし非常に狭き門で、これまでも受からなかった――というのがプロローグ。

で、急転直下、口に入る超小型の怪獣に取り憑かれて(あるいは食べちゃって)自分が怪獣に変身できるようになってしまう。怪獣になれることがバレると駆除されるので、正体を隠しながら所々で怪獣の力を発揮し、何とか怪獣を駆除する部隊の仮隊員として潜り込むという展開。

最近のジャンプの傾向に則って、あまりダラダラ引き伸ばさず、また面白いシーンを出し惜しみすることもなく、テンポよく話が展開していく。すごく面白い。

高松美咲『スキップとローファー』5巻

田舎から東京の進学校に出てきた女子高生の、今どき珍しいぐらい真っ直ぐな青春群像劇。でも絵柄やセンスは今っぽい。古くて新しいというかね。独特のポジションの漫画。

もうすぐ1年が経つけど、けっこう早かったなという感じ。でもそれは「漫画にしては」ということで、一般の学園モノの漫画みたくあそこまで高校生活は起伏に富んでいないと思うので、これはこれでリアルだなと思ったり。

はっとりみつる『綺麗にしてもらえますか。』6巻、はっとりみつる『かいじゅう色の島』1巻

『綺麗にしてもらえますか。』は記憶をなくした(ただしクリーニング屋さんの仕事の記憶は残っている)女性が、海も山も綺麗で温泉もある熱海で仕事をしていくという物語。記憶についてはほぼ手がかりなしだが、不思議と間延びや停滞は感じない。変わらず面白い。

『かいじゅう色の島』はちょっとミステリタッチ。面白いんだけど、どうだろ、はっとりみつるは突き抜けた明るさ(幸せ感)が魅力だと思うので、こういう作品がどの程度ハマるかなとは思う。続きを注視って感じ。

珈琲『ワンダンス』5巻

ワンダンス(5) (アフタヌーンコミックス)

ワンダンス(5) (アフタヌーンコミックス)

  • 作者:珈琲
  • 発売日: 2021/03/23
  • メディア: Kindle版
吃音症で自分に自信のなかった少年が「ダンス」という表現手法と出会い、化けていく物語。ダンスバトルでサブキャラにも光を当てるという、まあよくある展開。わたしはこの手のバトルで(対戦相手ならまだしも)脇役と脇役の心の内をひたすら見せられるのがあまり好みではないので、「まあよくある展開」という批判めいた書きぶりになっているが、面白いことは面白い。

赤坂アカ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』21巻

連載当初の「天才」も「恋愛頭脳戦」もなくなったが、今なおただただ面白いラブコメ漫画。21巻はなかなかのシリアス具合だったが、まあ落ち着くべきところに落ち着いたというか、予想通りではあった。もうちょっと捻った展開でも面白かったかも。

香山哲『ベルリンうわの空』『ベルリンうわの空 ウンターグルンド』

ベルリンうわの空 (so nice books)

ベルリンうわの空 (so nice books)

  • 作者:香山哲
  • 発売日: 2020/01/12
  • メディア: Kindle版
ベルリンうわの空 ウンターグルンド (so nice books)

ベルリンうわの空 ウンターグルンド (so nice books)

  • 作者:香山哲
  • 発売日: 2020/10/01
  • メディア: Kindle版
ベルリンに住んでいる漫画家(というか広くクリエイター)のエッセイ漫画。

ベルリンはとにかく素晴らしいという前提で描かれているため、リアルな街の描写という感じは正直しないのだが、作者のリアルな感情は伝わってくる。

ベルリンというと大都市というイメージを抱くのだが、確かに少しのんびりしたところがあるように感じる。あまりネットに毒されていないのかな。それとも作者がそういうコミュニティを意識的に選んでいるのだろうか。

漆原友紀『猫が西向きゃ』3巻

猫が西向きゃ(3) (アフタヌーンコミックス)

猫が西向きゃ(3) (アフタヌーンコミックス)

  • 作者:漆原友紀
  • 発売日: 2021/02/22
  • メディア: Kindle版
ある一部分の桜だけが年中なぜか満開だったり、三叉路(Y字路)が七叉路になったり、物体のカドが全て丸くなったり、35歳の女性の姿形だけが10歳ちょっとの見た目に若返ったりと、訳のわからない不思議な「自然現象(フロー現象と呼ぶ)」が起こるパラレルワールドが舞台で、このフロー現象に対処する業者が主人公の漫画。

詳しくは1巻の感想にしっかり書いた。

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で、完結。

ちょっと急だったな。打ち切りか?

もう少し続けてほしかった気もするが、ちょっと盛り上がりに欠けた気もする。

ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』10巻

自分の霊的な存在を触られてビクッとなる感覚と性的快感を意図的に混同して描写するという、非常にテクニカルなBL漫画。BL漫画というよりはミステリ・ホラージャンルと整理した方が適切かも。

補足すると、BL漫画と書いてしまったがBL成分は元々薄めな上、途中からはその手の描写が控えめになり、最終10巻は、人と人がどう関係性を構築するか、そして過去と向き合い乗り越えるか、みたいな話になって、BL的な要素はほぼなくなった。大きな風呂敷をしっかり畳んだなーと思ったり。

ヤマシタトモコの中では地味な作品なのだなと勝手に思っていたが、よくよく考えると今のところ彼女の作品の中で最も長編だし、実写映画化もされたし、今後テレビアニメ化されるそうだし、さらにWikipediaによれば体感型ゲームも作られたようだ。かなりのメディアミックスである。

高津マコト『渡り鳥とカタツムリ』1〜2巻

まさに渡り鳥の如く、キャンピングカーで気ままに旅をする女性漫画家と、その女性漫画家に憧れて?なのか会社を休職してやはり車で(違う車だが)一緒に旅をする男性会社員の話。男の方は多少の恋心があるけれど、基本的にラブ要素はほとんどなく、旅漫画って感じ。

2巻からは、バイクでやはり気ままに旅をする女性ライダーが出てきて、これまた賑やかになって面白い。

芥見下々『呪術廻戦』14〜15巻

呪術廻戦 14 (ジャンプコミックスDIGITAL)

呪術廻戦 14 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:芥見下々
  • 発売日: 2021/01/04
  • メディア: Kindle版
呪術廻戦 15 (ジャンプコミックスDIGITAL)

呪術廻戦 15 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:芥見下々
  • 発売日: 2021/03/04
  • メディア: Kindle版
非常に面白い。

最近のジャンプは、引き伸ばしをやめて、展開の早い漫画、そして良いところでスッと終わらせる漫画が増えてきたと思う。

これも展開はけっこう早い。