ポール・ストラザーン『90分でわかるサルトル』

今回は「90分でわかる哲学者シリーズ」のサルトル。サルトルは実存主義の雄であり、本書を読む限り実存主義とはとても魅力的な思想であることは間違いない……のだが、実存主義の良さなんて俺には伝えられないので、詳しくは本書に譲りたい。90分の読書時間+1000円の対価としては、本書の内容は素晴らしすぎると思う。いやマジで。

本書を読んでいて(実存主義に直結すること以外で)興味深いことが2つあったが、1つはサルトルの女性遍歴だ。サルトルとボーヴォワールの関係はとても先進的で、2人は互いの関係に縛られること(だから結婚もしない)と互いの関係の不透明さを嫌った。だから堂々と別のパートナーとセックスするが、サルトルは透明性を保つためにボーヴォワールにセックスの模様も含めた「全て」を報告するのである。その後ボーヴォワールはレズに走る(この件が関係しているとしか思えない!)のだが、ボーヴォワールは自分が楽しんだワンダという17歳の女をサルトルに回す。サルトルはありがたく受け取って色々と楽しんだあと、今度はワンダの妹オルガに手を出すのだ。何つーか凄い世界だなあ……。

もう1つは「カフェ」の存在である。サルトルは日夜セーヌ左岸のカフェで議論を行い、アイデアを育んでいった。ここは知の最先端であると同時に、それを生み出す土壌なのである。この対話と議論の場所が俺には羨ましくて仕方ないが、残念ながら日本には「カフェ」がない。あるのかもしれないが、一般的な存在ではないし、開かれてもいない(開かれているかもしれないが知られていない)し、相手もいない。それでも今はインターネットがある。インターネットは「カフェ」を作り出すことが可能かもしれない。