荒俣宏『シム・フースイVersion2.0 二色人の夜』

風水で戦うというあまりに微妙すぎる設定とストーリーを持つ「シム・フースイ」シリーズだが、風水師:黒田龍人とミヅチは今回、意志を持って浜辺に上陸してくる腐ったサンゴ礁と戦います――といっても正確に言えば必ずしもサンゴ礁と戦うわけではないのだが、やはり怪しすぎる。黄色いカビが相手の前作『シム・フースイVersion1.0 ワタシ no イエ』にも全く負けてないネ!

さて、9月6日に読了した『シム・フースイVersion1.0 ワタシ no イエ』の時点で言っておいた方が良かったかもしれないが、風水とは「地相を見ることで吉凶を占う占術」のことである。邪気の侵入しやすい地相や家の間取り・家具の配置などがある。その逆に邪気の侵入を防いでくれるような地層も存在する。「寝室に鏡を置いてはいけない」とか「トイレや風呂に観葉植物はダメ」などといったものが有名だ。

ただ風水が他の占術と決定的に違う点は、自分の吉凶を比較的容易に変えることができるという点である。たとえば手相や生年月日・名前による占いは、良くない結果が出ても変えようがない。しかし風水の場合は、地相や家の間取りが少しくらい悪くても、家具の配置などを変えることなどで、ある程度は運勢を改善することができるのである。

ところで、さっき「風水とは地相を見る占術である」と書いたが、より正確に風水で占おうと思えば、単に地相を見るだけではなくて星回りや土地の住人の生年月日やら何やらの複雑な計算が必要になってくる。そこで風水師:黒田龍人は複雑な計算を全てパソコン上の「シム・フースイ」というソフトによって計算していくのであるが、黒田龍人の「機械風水」とも言うべき風水には欠点がある。邪気や霊の存在を感覚で捉えることができないのである。端的に「霊感がない」とでも言おうか。そうなるとやはり「霊感」を持つ人の手助けが不可欠であり、そこで「霊感」を持つ女風水師:ミヅチが、助手として、その役目を果たしていく。

う〜ん、怪しげだが、非常に怪しげだが、とても練られた設定だ。また、怪しげといっても「シム・フースイ」シリーズでは「霊感」というものが特別な位置付けを与えられている。「超能力」というイメージでは全くない……のだが、どうも長くなったので、その説明は「シム・フースイ」シリーズ3作目『シム・フースイVersion3.0 新宿チャンスン』の感想に回すことにする。

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