香山リカ『インターネット・マザー』

ファミ通で連載していた(今はしていないと思う)ことで知っている人も、俺の世代では多いかもしれない。黒いメガネをかけた女の精神科医である。メディア露出度が高いから、わりとよく知られていると思う。

タイトルが示すとおり、本書はインターネットがテーマの論考集である。インターネット空間は母胎のような甘ったるい場所で、さしずめ現代人は羊水に浮かぶ胎児のようなイメージなんだそうだ。論理展開は基本的にはショボい。というかショボ過ぎる。「精神科医は軽々しく語るべきではない」といった意見にある程度同意しつつ、「たとえスタンドプレイに終わることになっても、それでも誰かがスポークスマンになるべきである」といった感じのことを主張する。なのに、「それでもそれが単なる自己顕示欲と揶揄されるのであれば潔くスタンドプレイの舞台から下りましょう」などと宣言し、そして未だに軽々しく語り続けている――どないやっちゅうねん!

論理もさることながら、文章の稚拙さにもウンザリ気味。まあ単発で面白い視点は時々あるのだけれど、もうちょっと練られた文章にしてほしいなあ。もしこれが気軽さの演出なのだとしたら、完全に逆効果でしかないと思う。