中尾英司『あきらめの壁をぶち破った人々』

組織には変化や革新を阻む様々な「壁」があるが、そうした壁に幾つも囲まれるうちに、それぞれの心の中には「あきらめの壁」が作られてしまう。本書は、大企業病に陥ってしまい、多くの問題や不満を抱えながらも「あきらめの壁」の形成によって変化を拒んでいる会社を舞台にして、ITを導入してBPRを成し遂げることを通して会社を変革し、「あきらめの壁」をぶち破る――といったアウトラインのビジネス小説である。

少し説教臭いところがあるし、主人公の考え方が常にベストなので、ストーリーとしての深みにも欠ける。ただ、そうした欠点を考慮しても、主人公の葛藤や悩みがリアルに描かれていて、非常に良い本だと言える。カウンセリングの考え方や手法が随所に散りばめられているのも興味深い。