ケネス・A・ポルシン+苅部洋史『PEO雇用革命』

PEOは、「雇用代行業」と訳される、主に小企業に対するサービスである。

福利厚生や給与計算などは、実は規模のメリットの大きい業務である。保険などの福利厚生サービスはボリュームディスカウントが働いて、大企業ほど有利なサービスを得られる。給与計算などのシステムも、数百人だろうと数万人だろうと労力はそれほど変わらない。銀行のローンなども規模の大きい会社の方が有利であろう。しかし小企業は(当然ながら)大企業のようなサービスを提供できないし、限られた人的リソースを管理部門に多く割くのは得策ではない。そこでPEOサービス会社が、そうした企業に代わって小企業の従業員を雇用し(あるいは共同経営者となり)、PEO企業は規模のメリットを活かして優れた福利厚生や給与計算等のサービスを提供し、クライアントの小企業は煩雑な管理業務から解放されて本業にリソースを集中できる――という構図になっている。

この10年、アメリカでPEOというサービスは非常に成長し、大きなマーケットを成長しているらしい。何十万人といった顧客を抱えたPEO企業もあるようだ。まだ日本ではそれほど聞かないが、似た概念なら既に一般的だ。アルバイトの管理業務を代行する企業は存在するし、給与計算や研修のアウトソーシング/BPOも一般化している。雇用代行といった形で日本に本当に普及するかは疑問だが、興味深いサービスなのは確かである。