ドン・コーエン+ローレンス・プルサック『人と人の「つながり」に投資する企業』

人と人の「つながり」に投資する企業―ソーシャル・キャピタルが信頼を育む (Harvard Business School Press)

人と人の「つながり」に投資する企業―ソーシャル・キャピタルが信頼を育む (Harvard Business School Press)

本書の帯の言葉が、本書の内容を端的に示している。

大切なのは「何」を知っているかではない、「だれ」を知っているかである。

「百聞は一見に如かず」などと言うが、確かにその通りで、本で読んだ知識だけでなく、自分が実際に見たり体験したりしたことは重要である。しかし、自分のできないことを誰かに依頼したり、誰かの知識や経験を共有させてもらったりすることは、自分の直接体験以上に重要ではないだろうか。時間も権限も限られ、業務の複雑化・専門分化も進む中、自分が実際に見たり体験したりできることなんて、本当に僅かだ。協働することの重要性を、俺も痛感している。
ナレッジマネジメントという言葉が(半ば流行り言葉的に)ビジネス用語として浸透してきたが、その根本は、システムの有無やコンサルタントや横文字のキーワードではなく、社員同士の「信頼」であろうが、信頼に支えられた人と人とのつながりを、本書では「ソーシャル・キャピタル(社会観系資本)」と呼んでいる。それほど目新しい概念ではないかもしれないが、終身雇用の崩壊した現代日本において、人と人とのつながりを企業内でいかに構築していくかという視点は、とても重要だと感じる。非常に興味深い本。