- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2004/01/23
- メディア: DVD
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モチーフやテーマも、パトレイバーや青春ストーリーは奥に引っ込み、テロと情報操作によって戦争状態が「作り出された」東京――という、劇場版第1作よりもさらに押井守個人の主題が中心に据えられた構成となっている。1989年公開にしてOSの概念やコンピュータウィルスの脅威を取り上げた劇場版第1作にも驚かされたが、1993年公開にしてテロや情報操作の都市に与える脅威を主題的モチーフとした本作も、見事なまでに2006年現在のクリティカルトピックを先取りしている。人によっては、9.11やアルカイダの脅威を予見した思考実験とまで考える人もいるようだ。そこまで書くと少し言い過ぎかもしれないが、実際問題、劇場版第1作と本作の予見性と隙のない完璧な展開は、いわゆる「アニメ」の偏見的な先入観を打ち破るに充分な作品だと強く思う。
ただし、パトレイバーファンとしては、その「隙のなさ」に複雑な思いを抱くこともまた事実なのである。隙だらけだけど繊細で愛すべきキャラクターと、登場人物やアニメの作り手の「レイバー」に対する惜しみない愛情(もしくは愛着)、本作では排除されたこれらの魅力も、パトレイバーシリーズの大きな財産だと俺は思うからである。もう作られることはないかもしれないが、第二小隊の活躍がまた観たい気もするし、世界観と雰囲気を共有したパトレイバーの続編的作品が観たい気もする。