森下伸也『逆説思考 自分の「頭」をどう疑うか』

逆説思考  自分の「頭」をどう疑うか (光文社新書)

逆説思考 自分の「頭」をどう疑うか (光文社新書)

そもそも逆説(パラドックス)思考とは何か? 「はじめに」では、以下のように書かれている。

通常の価値観の一面性を暴露し、それを反転させてしまう思考のスタイルを、「逆説思考」という。この逆説思考をさまざまな角度から紹介し、読者のみなさんに慣れ親しんでいただくこと、さらにはそれを自家薬籠中のものとしていただくこと、これが本書の目指すところである。

著者は以前『パラドックス社会学』という痛快かつ基本を押さえた社会学の入門書を出していたが、本書は『パラドックス社会学』よりもさらに一般向けに書かれており、社会学(社会科学)に馴染みのない方でもすんなり読み通せるようになっている。しかし逆説思考を「転倒思考」「逆因果思考」「因果反転思考」の3つの基本形に分けて紹介していること、一般書から半歩進んで「予言の自己成就」などの学術的なスキームを紹介していることなど、本の構成自体は非常にしっかりしている。さらには、著者が日本笑い学会理事とのことで落語のネタが頻出するなど、一癖も二癖もあるなかなか面白い本である。佳品。