ジュリアン・バジーニ『100の思考実験』

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか

思考実験を集めた本。政治哲学や倫理的なものが多いかな。ただし1テーマあたりの分量が少ないからか、どうもしっくり来ないまま次のテーマに移ってしまう。何だかなー。

余談

以前、思考実験やパラドックスやジレンマの類をネットで集めてメモ帳に残していたので、備忘を兼ねて紹介。ただしひとつひとつの問題や解説は俺が考えた訳ではなく、あくまでもネット(Wikipediaが多いかな)から拾ってきたもの。まあこれを眺めるだけでも面白い。ということは本書を買う必要はなく、十分ネットで知的好奇心は満たされるかもしれない。

  • 安全保障のジレンマ
    • 軍備増強や同盟締結といった自国の安全を高めようと意図した国家の行動が、他国に類似の措置を促し、双方が欲していない場合でさえも、紛争をもたらす緊張の増加を生み出してしまう現象。
  • イノベーションのジレンマ
    • 優れた特色を持つ商品を売る巨大企業が、その特色を改良する事のみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かず、その商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業の前に力を失う現象、あるいはその理由を説明した経営理論。
  • 親殺しのパラドックス
    • タイムマシンで過去に行き、自分が生まれる前の自分の親を殺したとき、自分は産まれてこないことになる。またそうなると自分が居ないために親が殺されない。さらに、親は殺されないため自分は生まれてくる。というタイムパラドックス
  • カルネアデスの板
    • 難破して海に投げ出された船の乗組員が、一片の板切れに掴まっていると、同じ板につかまろうとする者がいた。しかし二人がつかまれば板そのものが沈んでしまう…という倫理問題。
  • ギッフェン・パラドックス
    • 普通は値段が上がれば需要が落ちるのに、ギッフェン財では値段が上がると、かえって需要が増えるという現象。プレミアのことか?
  • グロスマン・スティグリッツパラドックス
    • 市場には制度摩擦もノイズもないと仮定すると、市場価格は情報を完全に反映しているはずである。したがって投資家は市場価格だけを見ていれば、必要十分な情報を入手することができるため、誰もコストをかけて情報を入手しようとはしなくなる。しかし、そうであるとするなら市場に情報が流布せず、この議論の前提が崩れる、というパラドックス
  • 倹約のパラドックス
    • 景気が悪くなるとその対策として皆が倹約するが、その結果として需要が減り、さらに景気が悪化するパラドックス
  • コモンズの悲劇
    • 多数者が利用できる共有資源が乱獲されることによって資源の枯渇を招いてしまうという経済学における法則。また、そのジレンマ。
  • 自己言及のパラドックス(嘘つきのパラドックス);
    • 「この文は偽である」という構造の文を指し、自己を含めて言及しようとすると発生するパラドックス全体のことを指す。
  • 社会的ジレンマ
    • 社会において、個人の合理的な選択が社会としての最適な選択に一致せず乖離が生ずる場合の葛藤状態。フリーライダー問題の元理論?
  • 囚人のジレンマ
    • ゲーム理論の用語で、相手の出方によって自己の利益に違いが出るという設定下で、二つの選択肢が与えられた二人の人間が遭遇するジレンマ。
  • シュレディンガーの猫
    • 量子力学による解釈。観測するまでは、様々な状態が「重なりあった状態」で存在し得るという思考実験の一種としても引用される。
  • シンプソンのパラドックス
    • 集団を2つに分けた場合にある仮説が成り立っても、集団全体では正反対の仮説が成立することがあるというパラドックス
  • 砂山のパラドックス
    • 砂山から数粒の砂を取り除いても砂山だが、数粒取り除く操作を何度もくり返し、最終的に一粒だけ残ったものも「砂山」と呼べるかというパラドックス。起源は「ハゲ頭のパラドックス」とされる。
  • 世界五分前仮説
    • 「世界は実は5分前に始まったのかもしれない」と考える懐疑主義的な思考実験。
  • ゼノンのパラドックス
    • カメを追いかけてカメのいた地点にたどり着いても、その時点でカメはさらに先に進んでいるため、永久にカメに追いつくことはできないというパラドックス。「トムソンのランプ」も類題と考え得る。
  • 全能の逆説
    • 全能者は自分が持ち上げることができないほど重い石を作れるかというパラドックス。いわゆる矛盾?
  • 相対主義パラドックス
  • 探求のパラドックス
    • 探求の対象が何であるかを知っていなければ探求はできない(さもなくばそれは顔も名前も知らない人を探すようなものである)。しかし、それを知っているならば既に答えは出ているので探求の必要はない……というパラドックス
  • テセウスの船
    • 度重なる船の修理で部品交換を繰り返しているうちに、船ができた当初あった部品は全て無くなった。現在の船は最初の船と同一のものか、という思考実験。「スワンプマン」も同種の思考実験である。
  • 投票の逆理(コンドルセパラドックス
    • 投票において投票者一人一人の選好順序は推移的なのに、集団としての選好順序に循環が現れる状態があることを表す命題。
  • トロッコ問題
    • 「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という倫理学の思考実験。「臓器くじ」も功利主義と倫理主義の葛藤を端的に示した同種の思考実験。
  • モンティ・ホール問題
    • 事後確率・主観確率の例題。3囚人問題・ベルトランの箱のパラドクスなどの類似する例題がある。