ジョン・アーヴィング『熊を放つ(下)』

熊を放つ 下(村上春樹翻訳ライブラリー i- 2)

熊を放つ 下(村上春樹翻訳ライブラリー i- 2)

村上春樹翻訳ライブラリー。
ジョン・アーヴィングの処女長編。ジギーの夢想していた動物園の開放を、ジギーの代わりにグラフが実行しようとする。ジギーのためなのか、自分のためなのか、ジギーの亡霊にとらわれたのか、わかるようでわからなかった。しかしガレンとの仲がこじれてしまっても実行しなければならない何かが「動物園の開放」にはあるのかもしれないな、と思わせるだけの切迫感は読み手である俺に伝わってきた。あるいは、これは動物園でなくても全く構わない、青春時代に見られる焦燥感そのものなのかもしれない。
ラスト――これは、どう判断したらいいのか。妙な感覚だ。これは小説という表現形式にしか出せない読後感かもしれない。