- 作者: 黒木亮
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: 単行本
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「脳が損傷して十分に判断できない人に対して、認印を勝手に作るといった犯罪行為を織り交ぜて無理やり多額の金を貸し、しかも貸し手側も借り手側も関係者がドサクサに紛れて大金を抜いている」というとんでもない事件なのだが、邦銀は「私たちは知らない、主人公に聞いてくれ、でも主人公はどこにいるかわからない」という主張を繰り返していた。もちろん主人公にしてみれば、そんな悪さはしていないばかりか、そもそも邦銀時代にこの顧客に会ったこともないわけで、「そんなことを言われても困る」と銀行に牙を向く――というアウトラインだろうか。
この手の話は、本当によくあることだと思う。俺だって、しっかりと引き継ぎをした業務や、そもそも俺が全く関係していない業務であっても、前の会社を辞めた後「申し訳ありません、○○が十分に引継ぎをしなかったものですから……」くらいのことは普通に言われていると思う。俺の前に辞めた人が、同じように扱われていたからである。哀しいが、それが会社というものである。