黒木亮『エネルギー(下)』

エネルギー(下)

エネルギー(下)

サハリンの巨大ガス田開発、イランの「日の丸」油田をめぐる暗闘、シンガポールの石油デリバティブ巨額損失事件という、いわゆるエネルギービジネスがテーマのビジネス小説。この本そのものに対する感想は前日のエントリーを読まれたし。黒木亮は、章ごとに複数のエピソードが入れ替わり、それらのエピソードがほとんど(あるいは全く)関わり合うことなくパラレルに進行する構成を取ることが時々ある。最初は読みづらいかもしれない。しかし、世界中のビジネスマンが知り合いであることなど当然ないのである。この構成は、表面上はほとんど無関係に見えるエピソードが、よくよく見ると実にデリケートな形で折り重なって世界経済は進展していたのだな――という、経済活動の奥深さ(のようなもの)の一端を感じ取ることができる。