小山龍介+土橋正『ステーショナリー ハック!』

STATIONERY HACKS!

STATIONERY HACKS!

いわゆるライフハック本である。これは文具に絞っているが、ステーショナリーハックとはよく言ったもので、これまでの便利術と何がどう違うのか、ここまで解釈が広がるとほとんどわからない。
俺の理解が正しければ、そもそもライフハックというのは、圧倒的な生産性を誇るアメリカのハッカーギークと呼ばれる人種が実践していた、ちょっとした工夫で高い効果を生む仕事術のことを指していたはずである。それがクールなやり方であったり、クールなツールやガジェットを使っていれば、もっと良い。物凄く乱暴に言えば、10時間かけてエクセルの単純作業をするくらいなら、9時間50分かけてマクロを組んで、残り10分で実行する方が、楽しいし、クリエイティブだし、同じような作業で再利用が可能だし、それって「クール」だよね、という発想の仕事術なのだと理解している。ツールやガジェットの場合も同様で、例えばこれまでのどんなメールソフトも結局は「分類」方法の工夫で効率が決まっていたけれど、Gmailであれば、とりあえず放り込んでおけば後から一瞬で検索出来るし、より効率的に検索したいなら、どこに分類するかなんて考えず思いつくタグを全て付けておけば良い。これって「クール」だよね、というものだ。
俺は、この種のクールさにそれなりの魅力を感じるのも事実で、ハックと書かれている本に「ついつい」手を伸ばし、ほとんど文具やフリーソフトGoogle活用術に終止するライフハック本に何度も後悔してきた。だから今回は最初から「単なる文房具の紹介」だと思って買ってみたのだが、その意味では予想通りの本だった。カタログとしては便利だけれど、ライフハックが日本に紹介された頃の「クール」な感覚は全く感じない。
「単なる文房具の紹介」と割り切るなら、決して悪い本ではない。ただしライフハックを完全に「飯の種」に堕落させたこの種の本全般に対して、商魂逞しさは感じるものの、あまり良い気はしない、というのも事実なのである。