- 作者: 鈴木貴博
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/06/07
- メディア: 単行本
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俺は正直「世代論」が好きではないのだが、あえてこの前提に乗って話をするなら、俺は1978年生まれなので、ギリギリ本書で言う「ワンピース世代」に属している。ただし個人的には、俺ら1978年生まれは「エヴァンゲリオン世代」という方が適切かもしれないと思う。
なお1978年生まれとは、少年期や思春期・青年期に、こんな社会的事件や現象に遭遇した世代である(俺が思い出しながら書いているだけなので、抜け漏れや偏りはたっぷりあることを事前に了承いただきたい)。
- 思春期に突入する前後に「湾岸戦争」と「バブル崩壊と喪われた10年」を目の当たりにして「社会は確実に、そしてどんどん悪くなっていく」というどんよりとした空気を一身に浴びて成長する。
- その後、思春期真っ只中に地下鉄サリン事件と酒鬼薔薇事件を目の当たりにして、さらにテレビ番組で少年が発した「なぜ人を殺してはいけないのか?」という問いに大人たちが右往左往する様を見ることで、「倫理や社会規範って何なんだ?」というニヒルな空気に包まれる。
- 地下鉄サリン事件と同じ年に阪神大震災に遭遇して、自然最後に対する人間の無力さを痛感する。しかしその後、信じられない速度で復興する神戸の町並みを見て、何だ人間の力って意外に凄いんだと、自然災害の怖さを急速に忘れ去っていく。
- 思春期の完成と青年期への突入に相当する時期に、アメリカ同時多発テロ事件の衝撃的な映像を見て、世界の理が変わった瞬間に立ち会ったことを確信する。*1
- 凄まじい社会的事件と対照的な、ネットを通じた内向的・精神的世界の可能性に熱狂した世代である。俺より下の世代はネットを既に「所与のもの」として受け取ったし、俺より上の世代はネットを「学ぶべきもの」「対応すべきもの」として受け取ったであろうが、俺らの世代はネットを「純粋可能性」として受け取った。思春期の完成時期である大学時代に、ネットが物凄い勢いで発達したのである。もはや死後になりつつある「ホームページ」や「チャット」に熱狂した世代でもある(これはもう少し上の世代の方がより当てはまるかもしれない)。しかし一方で、発展するネット世界の魅力と社会不況の合わせ技一本で、社会進出に失敗した「ニート」「引きこもり」も多い。
- 様々な生きづらさや団塊世代と比較した不公平感を感じつつも、何とか折り合いをつけながら社会人として一人前になったと言える時期に、東日本大震災に遭遇し、そして世界の理が再び変わったことを直感する。具体的にどう変わったかは、これから否応なく味わっていくことになるんだろうけど……。←今ここ
そして地下鉄サリン事件&阪神大震災と酒鬼薔薇事件の間の時期に『新世紀エヴァンゲリオン』が放送され、エヴァの衝撃が冷めやらぬ中、エヴァの膨大な解釈論に囲まれてアメリカ同時多発テロ事件やネット社会と対峙したのである。はっきり言って『ONE PIECE』なんかよりもよっぽど俺らの世代の精神構造や行動特性に影響を与えたと言えるであろう。
ただ、俺より若い世代については「ワンピース世代」という指摘が当てはまっているようにも思えるから、ワンピース世代とガンダム世代の間の一時期に「エヴァンゲリオン世代」が存在するのかもしれない。
さて、実は世の中には「スラムダンク世代」というのもありまして……(キリがない)
*1:実際に多分この瞬間に世界は変貌した。