久慈光久『狼の口 ヴォルフスムント』1〜3巻

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)  狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス)  狼の口 ヴォルフスムント 3巻 (ビームコミックス)
中世を舞台にした残虐漫画。
主人公は……誰だろう。ただし敵役は決まっている。関所の万人である。どんな不法・不正な通り抜けも見逃さず、見つけたら残虐に殺して晒し者にする。しかし圧政による民衆の不満は日増しに高まっており、人々はこの関所を通り抜けて叛乱勢力をまとめようとしている。主人公は、あえて言えば関所を通り抜けようとする人々そのものだろうか?
ただちょっと思うのは、設定は非常に面白いのだが、描写が残虐すぎる気もする。もちろん残虐であっても別に構わないわけだが、問題は、その残虐さにどこまでの意味があるのだろうか、という点である。例えば『ベルセルク』の「蝕」の描写は残虐だったが、そこには極めて大きな意味があった。あそこまで残虐な描写でなければ、物語が成立しなかったのである。けれど本作はどうだろう? 内蔵を飛び出させたり、女性を嬲り物にしたり、子供を犬に食わせたりする描写に、嗜虐趣味以上のものがあれば良いのだが。残虐描写の意味がなければ、残虐描写やブラックな話が好きな人にしか受け入れられないだろう。