クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』

『SFが読みたい!2014年版』で紹介されていた、「ガイドブック風」という、なかなか類例の少ないジャンルSF。
この世界では、北半球の国々が対立して戦争状態であるが、実際に戦闘が行われるのは南半球である(現実世界を彷彿とさせる)。北半球と南半球の間には「ドリーム・アーキペラゴ(夢幻諸島)」と呼ばれる多くの島々が中立地帯として存在している。しかしドリーム・アーキペラゴでは時空が歪んでいて、誰も正確な島の数はわからないし、幾つの言語や通過が存在するのかもわからず、地図の製作も不可能。島伝いに移動しなければならないのでドリーム・アーキペラゴ内の移動は非常に困難。本書は、そんな世界を旅行するためのガイドブックである。
「島」単位で章が設けられており、実際、何割かの章では本当に架空世界のガイドブック的に描かれているのだが、残りの島では、その島を象徴する、もしくは代表する物語が挿入されている。そしてその物語は、著者のこれまでのテーマやモチーフが存分に含まれているらしい。したがって、著者がこれまでに書いてきた「夢幻諸島もの」の集大成的な連作集となっているそうだ。
なかなかテクニカルな構成で、単に宇宙やロケットが出てきたらSFだよという世界とは全く異なっている。クソ長いので読むのは疲れるが、読み応えはある。