山田悟『糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて』

この5〜10年ぐらい「糖質制限」が凄く流行っているが、これの有用性を医師の立場から、最新の研究なども踏まえて解説した本。現役の医師らしく、あくまでもエビデンスを踏まえつつ事実を控え目に述べるタイプの本である。

例えば、炭水化物(糖質・食物繊維)・タンパク質・脂質の三大栄養素のうち、血糖値を上げるのはあくまでも糖質だけであるという事実。糖質だけを摂取する方が、糖質以外の様々な栄養素と一緒に糖質を摂取するよりも血糖値を上げやすいという事実。それらを踏まえ、近年は世界的に各種成人病に対しては「カロリー制限」ではなく「糖質制限」を推奨する流れになり、10年前とは栄養学の常識が異なっていること。しかもエビデンスの品質が上がってきて、この「糖質制限」を推奨する流れは、覆される可能性が低いこと。であるならば、血糖値という観点からは白米の大量摂取は控えた方が良いどころか、白米だけを食べるよりはチャーハンや卵ご飯を食べた方が良いという意外な事実が示される。また白米を食べずに玄米を食べる風潮も広がっているが、玄米にしたからといって白米の糖質自体が減っている訳ではなく、何となく玄米を食べれば良いという風潮にも警鐘を鳴らす。加えて、日本人を含む東アジア人は体質的に糖尿病になりやすいという事実も示される。

ただし冒頭で「控え目に」と述べたように、著者はケトン体をエネルギー源にすれば良いよねという風潮には懐疑的だ。体内でケトン体を生成させるような極端な糖質制限食は、かえって健康に害をもたらすというエビデンスが複数出ており、その懸念が解消するまでは安易にケトン体に頼るべきでないというのがその理由である。

よって著者は、(極端な糖質制限食ではなく)糖質を通常の半分以下程度に抑える緩やかな糖質制限食を推奨している。書名で「ロカボ」とあるのは著者の造語なのだが、この「緩やかな糖質制限食(本来は学術的な名称がある)」を著者なりにキャッチーにしたものらしい。