- 作者: 水田哲郎,松本隆夫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2015/12/19
- メディア: 単行本
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「目的思考とデザイン思考で要件定義を成功に導く」とあるが、本書では以下のように定義されている。なお、どちらも一般的に言われている同名の思考法ではなく、筆者らが独自に考えた定義とのこと。
目的思考は、不要な要望・要件を排除し、有効な要件に絞り込むスキル。要望・要件を実施することによる効果と影響を基に、要望・要件の有効性を判断する。
デザイン思考は、目的の実現に有効な要望・要件を抜け漏れなく抽出するスキル。要望・要件の十分性・網羅性を評価し、抜け漏れがあれば充足する。
ちなみに表紙には、目的思考には「この要望は何のため?」という吹き出しがついており、デザイン思考には「もっと良い手はない?」という吹き出しがついている。
つまり著者の言っている目的思考は「Why So?」、デザイン思考は「So what?」という、ロジカルシンキングの基礎技術に過ぎないのである。もちろん「基礎」と言って良いほど簡単なものではなく、突き詰めると奥深いものなのだが、それでも要件定義に限ったスキルではないのは確かであろう。
そうすると、では要件定義を専門に行ってきたがロジカルモンスターとは呼べないSEと、要件定義の経験など全然ないがロジカルモンスターなビジネスパーソンのいずれが適切に要件定義を進められるのだろうか? わたしは、もっと要件定義には「型」のようなものがあり、必ずしもロジカルモンスターなビジネスパーソンでなくとも、きちんと要求・要望を抽出し、それらを要件に仕立て上げ、設計フェーズに引き渡していくことができるのではないかと考える。残念ながらわたしにもまだ確たる答えはないが、必要なのはロジカルモンスターではなく、そうした「型」の洗練と習熟ではないかと思っているのである。
結論。
わたしにとっては1年前に読んだ羽生章洋『はじめよう! 要件定義』の方が使いやすい。そもそも要件定義は何のために何をして何を作れば良いか、そのためのポイントは何か、ということがビシッと書かれており、あちらはベンダー側・情シス側の双方にとって役に立つ。スタート地点として、『はじめよう! 要件定義』の方がブレない。また、洗練されていないもののとりあえずチェックポイントが詰まった本園明史『要求定義のチェックポイント427』の方が迷わない。
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