ITILとはInformation Technology Infrastructure Libraryの略で、要するにITサービスマネジメントにおけるベストプラクティスをまとめた好事例集ということになる。といっても「お客様に花束をプレゼントしたら喜ばれました!」みたいな単発の好事例集ではなく、方法論は結構しっかりと体系化されている。
コアとなるのは「サービスストラテジ」「サービスデザイン」「サービストランジション」「サービスオペレーション」「継続的サービス改善」の5つだ。全体方針や戦略を立て(サービスストラテジ)、業務設計をして(サービスデザイン)、運営準備をして(サービストランジション)、実際に業務を日々運営して(サービスオペレーション)、業務の運営状況の測定や報告・改善をする(継続的サービス改善)という風に、見事に一連のサイクルになっている。
なお、この5つのサイクルも実は幾つかの要素(プロセス)で成り立っている。以下のような具合だ。
- サービスストラテジ:
- ビジョンと目標の確認
- サービスポートフォリオ管理
- 需要管理
- 財務管理
- サービスデザイン
- サービスカタログ管理
- サービスレベル管理
- 可用性管理
- キャパシティ管理
- ITサービス継続性管理
- 情報セキュリティ管理
- サプライヤ管理
- サービストランジション
- 構成管理(サービス資産管理)
- 変更管理
- リリース管理
- ナレッジ管理
- サービスオペレーション
- サービスデスク
- インシデント管理
- 問題管理
- 要求実現
- 継続的サービス改善
- サービス測定
- サービス報告
- マネジメントルールやフォーマットの文書化・体系化
他にも、例えばサービス測定や報告をするための活動として「測定すべき内容の定義」「測定できる内容の定義」「データの収集」「データの処理」「データの分析」「情報の定時・活用」「是正措置の実施」という7ステップがさらに詳細に定義されているなど、ITILというものは掘り下げようとすればいくらでもやれる。
一方、これらを全部やっていくのは非常に大変だ。だからITILはつまみ食いでも良いとされているそうだ。よって上でも言及した『新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!』では上記のほぼ全プロセスを解説しているが、続編となる本書では「サービスレベル管理」「ナレッジ管理」「インシデント管理」「問題管理」をつまみ食いしてチーム改善する方法を(前作と同じくストーリー形式で)解説している。
現場の問題点も実にリアルで、素直に良い本だと思う。