- 作者: 今野敏
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/07/13
- メディア: Kindle版
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第3弾のモチーフは「テロと要人警護」であろうか。
冒頭はアイドルの一日署長の警護というややキャッチーな話題でお茶を濁しておきながら、本題は、アメリカ合衆国大統領の来日に合わせたテロの阻止という骨太ストーリーが展開される。どこの国も大統領や首相クラスはきちんとした警護がついているだろうが、それでも歴史上、何人もの人が暗殺やテロ被害の憂き目に遭遇している。近年は無差別テロみたいなものも多く、個人的には関心が高い。
一方、本作の特徴でもある、警察組織の壁に阻まれた様々な「下らない事情」が邪魔をして、なかなか現場が思うように動けなかったりするわけで。
原理原則だけで動く主人公というのは、これはもう「キワモノ」ではなく、シンプルに「ヒーロー」なのかもしれない。
補足
続きモノなので以前に書いた本シリーズの紹介を、初見の方のために再掲しておく。
本作はいわゆる警察小説である。なので事件が発生して解決する推理ドラマと、警察組織の中でのドラマ、そして主人公の家庭内ドラマ、この3つのドラマが基本的に平行して走ることになる(最初の2つだけのこともある)。しかし本作は他の多くの警察小説と異なる点があり、主人公は警察官と言っても現場の刑事ではなく、キャリアである。警察官僚とも呼ばれる上層部のエリートなのである。さて、ここからはネタバレを含むので簡単に書くが、主人公は元々キャリアであることに大きな誇りと使命感を抱いており、順調に出世もしてきた。だが、自身の信条である「原理原則」にこだわった結果、1巻のラストで大森署の署長という降格人事を受けてしまう。しかし主人公は、独自のキャリア信条に忠実に、たとえ降格されても公のために働き続けるという選択をし、降格人事を受け入れる(通常は皆この時点で辞める)。そして降格先の大森署で、辣腕を振るい始めるのである。