甲田光雄+山下重幸+原岡哲郎+清水毅『家庭でできる断食健康法』

家庭でできる断食健康法 POD版

家庭でできる断食健康法 POD版

ここら辺の健康法の話は、何となく興味があったので何となく名前だけ知っていたが、ちゃんと確認したことがなかった。

まず、わたしより100年近く前(1884年)に生まれた西勝造という方が源流で、この人が「西式健康法」というものを始めたそうだ。凄く簡単に言うと、背骨が整っていることが健康に重要だとして簡単な運動や堅い布団・枕で寝ることを推奨し、さらには少食や生菜食を是として、そのために断食療法を推奨する、という方である。断食は一旦置いといて、まず腹八分目・野菜・運動というのは非常に理に適っていると思う。100年前は西洋の考え方がどんどん入ってきていた時代であり、その時代背景を考えるとかなり先進的な方なのではないかと思う(あるいは反動的だったのかもしれないが)。

で、西式健康法に影響され、また実践することで大病を乗り越えた甲田光雄という医師が、西式健康法を現代的にアレンジしながら自身の患者にも実践してもらうようになった。基本思想は西式健康法と言って差し支えないのだが、甲田医師は、特に断食療法について危険がないよう様々な実践知が付け加えていったり、さらに腸内環境に着目したりした。その結果、これらの取り組みが「西式甲田療法」と呼ばれるようになったそうである。

さて本題。

その上で、本書は、西式甲田療法における断食健康法について最も詳しく書かれた本だと言って良いのではないか。

内容を簡単にまとめるが、断食とは本来、飲まず食わず、あるいは水しか飲まないことを指すであろうが、本書では、水だけしか口にしない「本断食」と、水以外のものを口にしても良いが固形物を口にしない「断食」を明確に区別している。本断食は実施に際してのリスクが高く、気軽に試してはならないものであるため、断食療法としては簡単にはおすすめできないものである、という整理である。その上で、断食療法として「寒天断食」「ハチミツ断食」「果汁断食」「果汁断食の変法(すりおろしたリンゴとか酵素ドリンクとか)」「青汁断食」「生野菜の泥状断食」「重湯断食」「スマシ汁断食」と、本断食ではない断食を実践してきたそうで、その実践法がまとめられている。その上で、本書では「スマシ汁断食」が最も気楽に実践できて効果も高いということで、スマシ汁断食の詳細な体験記が17名分も掲載されている。

ここでのスマシ汁断食とは、3合(540cc)の水に、昆布10gとしいたけ10gで出汁をとる。そしてこの中に醤油30〜40gおよび黒砂糖30gを入れて、冷めないうちに全部飲む(出汁が甘くなるのが嫌なら黒砂糖は別にポリポリ食べても良い)。朝晩このスマシ汁を飲み、スマシ汁以外と水と柿の葉茶以外のものを口にしてはならない……簡単に言うとこれだけである。簡単である。しかも塩分も糖分もそこそこ摂取している。しかしだからこそ気軽に挑戦できて、失敗も少ないらしい。このスマシ汁断食は、体重自体はそれほど減らないそうだが、宿便を出す効果と、少食に適した体質へ変える効果があるらしい。そして宿便を出すため、スイマグ(水酸化マグネシウム)という副作用のない下剤を使って毎日排便を促すそうだ。

ちょっと興味がある。やってみようかな。

余談

酵素が入って1本5,000円とか10,000円とかする、いわゆるファスティングドリンクと呼ばれるものも、要するに栄養分を摂取することで、本断食による健康被害リスクを抑えたり、食欲を抑えたりする効果があるのであろう。でも本書を読むと、正直、このスマシ汁とか具なし味噌汁とかで良いような気がする。