有限会社人事・労務『小さな会社の働き方改革対応版 就業規則が自分でできる本』

本書の発売は2019年6月。ホットトピックの法律はすぐに変わるから、この手の本は本来、出たらすぐ買って、かつすぐ読まなければならないと思う。けど、なかなかこういうのは及び腰になるというか何というか、ええ(言い訳)。

でもとりあえずざっくり読んだ。本書の第1章で近年の働き方改革に係る法改正の内容が記載されており、第2章以降でそれらを踏まえた就業規則で定めるべきルールや、ルールの効果的な運用について整理、最後の付録で就業規則の雛形をがっさり添付、という建て付けである。

第1章について、わたしなりにサマって書く。

  1. 残業時間上限はこれまで36協定(月45時間・年360時間)程度しか定めがなかったが、36協定に加え「月100時間未満(複数月平均80時間以内)、年720時間以内」という上限が設けられた。
  2. 大企業でなく中小企業も、月60時間を超える残業は50%の割増賃金を支払うことが義務化。
  3. 健康管理の観点から、高度プロフェッショナル制度の社員をの除く、裁量労働制の適用者や管理監督者も含めた全社員の労働時間の管理が義務化。
  4. 社員の十分な生活時間や睡眠時間を確保するため、勤務終了時刻から翌日の勤務開始時刻までに一定時間以上の間隔を設けるべしという、文字通り「勤務勘インターバル制度」が設けられた。ただし現状は努力義務。
  5. フレックス制は、労使協定で締結するだけでなく、労働基準監督署への届け出が必要になった。(特定の時期に仕事が集中し過ぎるリスクを追っていないか労働基準監督署が管理するため?)
  6. 高度プロフェッショナル制度の創設。ただしニュースでもたまに流れるが、制度適用はかなり厳しい。
  7. 年5日の年次有給休暇の確実な取得。
  8. 派遣社員を含めた同一労働同一賃金。
  9. 産業医・産業保健機能を強化。

改めて書き出すと、大半は、ニュースや、会社の人事部からアナウンスがあって知っているものだなと思った。年5日の有給取得の義務化なんかは、人事部もしくは上司からお達しが来ている人が多いのではないかと思う。

第2章以降は割愛するが、第1章で記載した法律変更を踏まえると、この辺の規程を整備せよとか、こんなものを作った方が良いとかが書かれている。なお法律変更だけでなく、1 on 1ミーティングなど、近年の労働管理やマネジメントの潮流なんかも踏まえたアドバイスも書いてある。

最初は分厚くて取っ付きづらいと思ったが、意を決して(つまりポイントを書き出すぐらいの心持ちで)読み進めると、読みやすい。ただ、専門用語を使わずわかりやすく記載することを意識するあまり、第1章についてどの法律の何条何項に記載があるか、すぐわかるものとよくわからないものがあった。一次情報に当たれないと後々困るので、その辺は読者が嫌がってもきちんと「同じページ」に条文をつけるべきではないかと思った。