- 経営戦略|企業としてどういう存在になりたいのか(ビジョン)、どの戦場(ドメイン)で戦うのかを定め、そこで何をウリにするのか(基本戦略)や敵とどう戦うのか(競合戦略)、どう取り込むのか(M&A)を立案すること。また企業が複数の事業を持つ場合には、事業ごとにそれらを行い、全体として統合(全社配分)・資源配分すること。
- マーケティング|各々の事業で市場や顧客・競合を分析することで、誰に対してどんな価値を売り込むのか(STP)、それをどうやったら実現できるのかを4つの対顧客活動(4P:商品、価格、販促、販路)を組み合わせて立案すること。
- アカウンティング|特定の期間中、その企業・事業が儲かったのか否か(損益)、資金繰り(キャッシュフロー)はどうなっているかを把握するための財務会計と、それらの状況・要因分析を行う管理会計がある。年度予算の立案・管理も含まれる。
- ファイナンス|株式や債券発行、銀行借入、自己資金など多岐にわたる資金調達方法を最適化し、かつ各事業に配分する。そのためにはさまざまな事業・投資価値評価(NPVやIRR)が必要となる。
- 人・組織論|企業とは結局、人の集まりでありそれらがどんな塊に分かれて、どんな役割を果たし、どんな責任権限を持つのか決めなくてはならない。それが組織論。そしてそこに集う人々を採用し、教育し、評価し、モチベイトし続けるのが人事(人間関係)論であり、そこにはリーダーシップ論なども含まれる。
- オペレーション|商品・サービスの提供のために必要な機器やプロセス、仕組みを立案すること。その範囲には調達、生産、物流、販売、サービスのすべてに渡る。
経営学の教科書は大抵、この分野ごとに書かれているわけだが、著者はこの分野ごとに満遍なく学ぶやり方は非効率で混乱の元だと語る。なぜなら、この6領域は実のところ「全社」レベルと「事業」レベルに分かれており、部長でも普段の仕事では事業レベルの知識しか必要としないからだ。
そこで著者は、まず初学者は事業レベルに特化して学ぶべきだと説く。かつ、分野別でなくビジネスモデルの4要素(目的)別に学ぶべきと説く。
- ターゲット(狙うべき相手) = 利用者、支払者など
- バリュー(ターゲットに提供する価値) = 基本価値とQCDS(企業向け)、ブランドや感覚などさまざま(消費者向け)
- ケイパビリティ(バリューをターゲットにどう提供するか) = リソース(経営資源)+オペレーション
- 収益モデル(対価とコストは見合っているか) = 売上−費用、他に替刃や広告モデルなど
この「目的別に学ぶ」というのが、わたしは凄く良いと思う。経営学に振り回されているのではなく、使いこなしている感じがする。
本書は、この4つの目的別に、事業レベルの知識を解説したものである。とても良い本。おすすめ。