鈴木義幸『セルフトーク・マネジメントのすすめ』

セルフトーク・マネジメントのすすめ

セルフトーク・マネジメントのすすめ

  • 作者:鈴木義幸
  • 発売日: 2014/08/29
  • メディア: Kindle版
セルフトークとは、著者によれば「感情や欲求、志向、行動の引き金として、自分の中に生まれる「言葉」」であるそうだ。

人は意識的 or 無意識的、言葉として意識する or 意識しないに関わらず、「くそっ」だの「許せない」だの「何があったんだろう」といった心の声を流しているらしい。

また、セルフトークが感情と行動に影響を与えるプロセスは、著者なりの考えでは以下のようになるらしい。

① まず、人にはあらゆることに対する判断基準であるビリーフ(*)がある
  (*) アイデンティティ・価値観・世界観といった自分が生きるために築き上げた考え方
② ビリーフが他人や環境から刺激を受けると、セルフトークが発生する
③ セルフトークが感情を決定する
④ その感情によって行動が決定する

要するに、刺激→ビリーフ→セルフトーク→感情→行動というプロセスである。

このプロセスの中で、行動を変えて感情と矛盾した行動を取るのも、感情そのものをコントロールするのも、自己啓発セミナーなどで基本的なアイデンティティを変えることも、そう簡単な話ではない。一方、セルフトークは皆がこれまで無意識に処理してきた部分であるが実際には「言葉」なので、セルフトークの存在を意識するだけでコントロールしやすくなる、というのが本書のポイントになるだろうか。

実はセルフトークには、2つの種類がある。本書にはもう少し細かくモデル化されているが、わたしの備忘としてシンプルに書く。

  1. 「感情」を呼び起こし、「反応」としての行動を導くセルフトークA。この「A」はautomatic(自動的)を意味し、自分の意志に関わらず自動的に生まれるセルフトークである。
  2. 「理性」を呼び起こし、「対応」としての行動を導くセルフトークB。この「B」はbear(生む)を意味し、自分の意志で生み出すセルフトークである。

外的刺激に対して一定のセルフトークが生まれるのは避け得ないとして、セルフトークの種類によって先ほどのモデルは以下のように変わる。

刺激→ビリーフ→セルフトークA→感情→反応
刺激→ビリーフ→セルフトークB→理性→対応

繰り返すが、ここでの「反応」とは感情によって否応なく引き起こされてしまう「受動的」な行動で、対応とは理性によって自ら生み出す「積極的」な行動である。

まとめよう。セルフトーク・マネジメントとは、外的刺激によって否応なく発生する心の声を自覚し、ポジティブなものに「変える」ことで、そこから派生する感情や行動をも理性的なものに変える手法である。とはいえ心の声を自覚するというのが難しいし、セルフトーク・マネジメントは単にセルフトークを「変える」だけでなく、「使う」「減らす」「なくす」といった技もあり(「なくす」はゾーンやフロー状態に繋がっていく)、これらのいずれも言うは易し行うは難しという印象をわたしは持った。

ただコーチングの本を読んで常々、コーチングを自分自身に実践したいというのを感じていたので、本書はその目的には合致している。

余談

本書は年末に買ったのだが、まさか1/29に『理想の自分をつくる セルフトーク・マネジメント入門』という本が同じ著者から出る。これも改訂版に近いものだろうか。買ったけど。