Atsu『パラフレ英会話』

パラフレ英会話

パラフレ英会話

  • 作者:ATSU
  • ディーエイチシー
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はじめに

先日来、英語を再度(そしておそらく最後の覚悟で)トレーニングしようと頑張っている。

いや、「頑張っている」とキラキラした目で言うには若干の語弊もあって、正直遅々として進んでいないが、「わたしの中では頑張っている」ということです……。もちろん働きながら毎日5〜6時間も、土日には15時間も勉強しているような人も世の中には山ほどいて、勉強量で言われるともう何かスミマセンと書く他なくてモチベ下がるから、ここについてはそっとしといてください、ええ。

閑話休題。その経緯や問題意識の一部は↓のFACTBOOKという本の感想で書いた。

incubator.hatenablog.com

まとめると、英語は「単語」「文法」「発音」から成り立っており、単語(イディオムや慣用表現を含む)の勉強は果てしなく続くものであるが、文法と発音の勉強には限りがあるということだ。もちろん例外事項を含めてマスターするには大変な時間がかかるし、発音を非ネイティブが完全マスターすることは困難とも言われる。しかしそれでも、基本的な文法ルールや発音記号・音声変化ルール等には限りがある。

実はこれ、まんま、本書の著者であるAtsuのYouTubeやブログ等で得た知識の受け売りである。

このAtsuという人は基本的に良いことを言っているなーと思ったし、個人的にはそれが目からウロコだったため、わたしは最近、上でも述べたFACTBOOKという網羅系の英文法書をやり込んでいる。

本書を読んだ経緯

さて、ここから本書を読んだ背景にもつながるのだが、この人の主張とは全く違うところで、実はわたしは数年来、やろうと思っていたことがある。

自分が朝起きてから夜寝るまでに使う英語表現を全てリスト化することである。

英語を英語のまま発信する、ないし受信するというのはよく言われるが、そもそもわたしの問題意識として、そもそも考えて日本語の文章を作文し、また喋っているだろうか? と思うことがよくある。正確な研究結果は知らないが、大半の会話や文章は絶対そうではないと思う。日本語ネイティブのわたしが日本語で話す際、特段どんな文章にしようかなどと考えず、自分の馴染みのある、もっと言うとこれまで何百回・何千回と使ってきた言い回しから選んで脊髄反射で発信しているだけではないかと思うことが最近多い。

自分の知らない、または馴染まない言い回しを日常で使うことはまずない。例えば、先日他人から言われて「おっ」と思ったのだが、わたしは「ご無沙汰!」「ご無沙汰しております」という表現を使ったことはこれまでの人生で1回もなかったと思う。物凄くベーシックな表現なのだが、使ったことがなかったのである。わたしの場合「久々やん」「お久しぶりです」だ。意味は同じだから別にどちらでも良いが、使ったことはない。何となくご無沙汰の方が格調高い気がして使っていこうと思ったので、最近社内のCHATでは使うようになった。

こうした単語ベースだけでなく、慣用句や言い回しでも感じることは多々ある。そしてその度に思うのだ。わたしは日本語ネイティブと言っても決まりきった表現を使っているなと。

英語も同じで良いのではないだろうか? いや英語だからこそ、より決まり切った表現ばかりでも大意が伝われば良いだろう。

そうであれば、自分が朝起きてから寝るまでに使っている言葉をリストして、それを全部英語にすれば良い、という発想である。

実はこの手の発想の本は意外にたくさんある。洒落た言い回しがどうの、ネイティブが使う言い回しがどうの、朝から晩まで網羅していてどうの、Web会議やビジネス会議、はたまた職種別に特化した英語表現がどうのとバリエーションも多い。でも本に載っているものをそのまま使おうとしても上手く行かなかった。わたしにとって価値のある例文とそうではない例文が混ざり合っているのと、価値のある例文もそのまま覚える文章には当然なっていないのだ。

  1. 使う必要のない場面(外国人と外国でコース料理を頼むチャンスなど現状ない)
  2. 使う必要のないセリフ(外国人に日本文化を説明することも現状ない)
  3. 自分には使いこなせない表現
  4. (細かいが)わたしの勤務先は XXX であって例文に書かれた YYY ではない

付言すると、そもそもわたしは、自分がピンと来ていない洒落た表現を使って、わたしが英語上級者だと思われるのは嫌だ。別に英語が苦手な人間だと思われても良いから(むしろそう思われてほしい)、苦手なりにきちんとコミュニケーションが取れればそれで良いのである。あくまで自分が納得した、使いやすくてピンと来る、イメージのわかる英文を、自分でリストしなければ意味がないと思う。少なくともわたしにとってはそうだ。そうしなければ単なる暗記作業になって、わたしにとっては物凄く苦痛だし、使えないからだ。

「自分が使う英語を全部リスト化するプロジェクト(仮称)」は、概ね以下の手順を取る。

  1. 自分が英語で使いたい内容を日本語で(重要)考えてリスト化する。
  2. それに合致した英語表現を本やネットで調べてリストする。リストは一軍(優先的に使うもの)と、二軍に分け、一軍は必ずひとつにする。
  3. 一軍は暗記して、かつ何十回も音読して即座に口から出るようにする。またイメージが湧くようにする。(わたしたちは「I love you.」や「How are you?」をわざわざ訳したりしない。)
  4. 新しい表現を知るたび、また他の人の使い方を見るたび、その表現を自分の例文リストに載せるかどうか、また一軍を入れ替えるかどうかを吟味する。

とりあえず日本語と英文のリスト(上記の1と2)を部分的に作り始めていて、この例文リストは現在、概ね100程度である。例えば自己紹介や「お久しぶりです」に始まり、「このメールにファイルを添付しました」「進捗はどうですか」「質問があれば遠慮なく相談してください」「今日のミーティングの目的は○○です」「声が遠いようなのでもう一度お願いします」など、多くはビジネスシーンでの表現だ。疲れただの食事に行かないかだのといった仕事時の休憩中に使われるような表現もリストアップしている。

文から意味が推測しづらいイディオム的な表現は極力避け、ベーシックな表現が中心である。しかしこの基礎的な表現が出てこず毎回メールを書く際に四苦八苦しているし、言われてもすぐわからないから困っているわけである。だから、まずは超基礎的なものを中心に、だんだん仕事で使うテクニカルな表現や、自分は使わないが相手が使う可能性の高い表現も二軍としてどんどんリストアップしようと考えている。最終的にはリストが300から500ぐらいになれば、会社の中で使う表現の多くを網羅できるのではないかなと考えている。

そうすると、英語力がまだ十分ではなくとも、その中の表現を何も考えずに(それこそネイティブのようにパターン選択して)使っていくだけで、基本的なコミュニケーションが取れるのではないか……そんな野望である。

本題(本書の内容について)

長くなった。そろそろ本題に入ろう。

本書は、「教科書英語(間違ってはいないが少しこなれていない表現)」を集めてきて、その言い換え表現(パラフレーズ)として、著者がオーストラリアで働く中で何度も聞いてきた「ネイティブがよく使う表現」を紹介する――という構成だ。例えば「いただきます!」という日本語について、「Let's eat!」が教科書的な英語表現だとして、そのパラフレーズとして「Let's dig in!」を紹介している。

上で書いたわたし用の例文リストに載せられる(載せたい)ものがないか全ての英文をチェックしたが、正直あまりピンと来なかった。

例えば「Sounds good.」を「Sounds like a plan.」に言い換えているが、そもそも前のほうがシンプルで言いやすい。もちろんこれぐらいならそこまで目くじらを立てる話ではないのだが、わたしは、ネイティブしか知らない言葉を使って英語上級者ぶるよりは、非ネイティブが聞いても即座にわかる表現で話したいと思っている。

また他にも怒りの表現として「I'm angry.」を「I'm pissed out.」と言い換えているが、これもピンと来なかった。pissとは小便のことだが、少しスラング的なニュアンスのある言葉だと聞いたことがある。わたしの感覚では「しょんべん」だ。わたしは「しょんべん」の意味のあるスラングを、たとえネイティブが日常的に使っているからと言って自分の表現として使いたくはない。日本語で「今日の○○部長の対応マジしょんべんッスよね」と言っているようなものだ。わたしは多少野暮ったくても「I'm angry.」と言いたい。もちろん、わたしは嫌だというだけの話である。意味は通るし、こなれているのだろう。