トレヴァー・ノートン『世にも奇妙な人体実験の歴史』

高校以来の友人に教えてもらった本。

科学とは何か? 科学的とはどういうことか? これはなかなか深遠な問いである。一貫した法則や再現性があることを科学ないし科学的と呼ぶのかもしれないが、その法則自体はあくまで「今わかる範囲で」ということである。そしてその「今わかる範囲」はこれまでの膨大なトライ・アンド・エラーで築き上げてきたものだ。そして本書は、そのトライ・アンド・エラーの過程を記述したものである。

毒物を薬と信じて飲んで失敗した話とか、寄生虫を囚人の体に敢えて寄生させた話など、なかなかトチ狂ったエピソードが多い。多いというか本書の大半がそうだ。しかし当時はギャグでもテヘペロでもなく、あくまで信念・執念を持った人間の行為である。こうした一見馬鹿げたトライ・アンド・エラーがなければ今の科学はなかったはずだし、そもそも毒と薬は表裏一体で、効果を発揮する量と致死量がかなり際どいラインにある物質もある。そう考えると、最初は「怖いもの見たさ」で面白半分に読んでいたのだが、途中からどんなスタンスで本書を読めば良いのか混乱してしまうかもしれない。

これは中高生に読ませたいなあ。クソ真面目な顔でなく、エピソード単位で授業の最初に配って、キャッキャ言いながら読むぐらいが面白いかも。