日野田直彦『東大よりも世界に近い学校』

海外大の合格者をたくさん出して学校説明会でも爆発的に人気が出ている学校の学園長が書いたエッセイ兼自伝みたいな本。日本の学校は公立も私立も御三家も都心も田舎も押し並べてオワコンであるというトゥの立った主張だが、総論では同意する。想像の範囲内で、ほとんど驚きはないけれど、まあまあ面白い。

こういう学校は、糞味噌に荒れ放題の一部の公立学校よりははるかにすばらしいとわたしは思う。一方、これはこれで「ある種の正解」すなわち「アメリカンスタンダード」としての振る舞いが強く求められすぎていて、個人的にはあまり居心地が良いとは思わなかった。いや、居心地の良い人もいっぱいいるだろうが、そうでない人もいっぱいいるだろうということだ。

はっきり言ってしまうと、プレゼン上等、課外活動上等、リーダーシップ上等、シリコンバレーでの起業上等、テックリード上等、というコテイカンネンが強すぎる。例えば、もっと「倫理的・教養的な教育」の重視だって「ある種の正解」ではあるし、フリースクールなどで育まれた「競争を前提としない成長」の重視も「ある種の正解」だとわたしは思う。

海外エリートモデル・国内高学歴モデル・国内準高学歴モデル・Fランモデルに強引に区分された教育のあり方が良いとは、わたしにはとても思えない。これは単に当人の偏差値を将来の収益力と等価で結びつけて序列化しているだけのモデルだからだ。一方、この学校は、あまり偏差値の高くない人々を「海外エリートモデル」にショートカットさせているだけにも見える。