村上龍『ユーチューバー』

『69』やその後日譚『長崎オランダ村』に登場した作家・矢崎健介が登場するが、直接的な関連性はない。

村上龍は、静かだが内に秘めた衝動や熱狂と、それが爆発したときの圧倒的な迫力を描くのが巧い作家だとわたしは思う。しかしこの作品には、そのようなものは感じられない。もちろん『空港にて』のように静けさのある小説もあるし、それがまた良かったりするわけなんだけど、これはどうだろう。決してつまらないわけではないのだが、面白いという感情も生まれない。ただただ静かで、まるで老齢に差し掛かった村上龍そのものを見せられたような気もする。

龍さん、次回作は『五分後の世界 III』をお願いします。もう一度、爆発的な衝動や熱狂を描写してほしい。