同じ作者の『ぎんなみ商店街の事件簿』が面白かったので買ってみたが、こちらも面白い。
というか尖っている。
本作の主人公はフーリンという金貸しの長身中国人美女で、探偵役は
事件の細かな設定は本書に譲るとして、本作が特徴的なのは、探偵役のウエオロが「奇蹟」を本気で信じ、それを証明したいと思っている点である。だから難しい事件が入ってくると、ウエオロは「これは奇蹟なのではないか」と喜んで仮説を「否定」して回る。
探偵はフツー仮説を精査して「肯定」して回るのだ。「これがトリックだ」「これなら人が殺せる」と。しかし本書は逆だ。この場の全員が共犯者だとか、死んだと思ってなかったけどその時は死んでなかったとか、犯人は漫画さながらに幼少時から毒を摂取しており毒耐性を持っていたとか、およそトリックとは言えない精度でもぜんぜん良くて、とにかく他の人が荒唐無稽なトリックの仮説を出す。そしてウエオロはあらゆる仮説を否定する。あらゆる仮説を否定し、どんなトリックでもゼッタイ人を殺せないという「悪魔の証明」が証明できれば、これは奇蹟としか言いようがないから奇蹟の証明になる――と、こういう論法である。