佐藤優はこれまで自伝的ノンフィクションを10冊近く出している。
その中でも代表作は、本書の「まえがき」で紹介されているように『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』『自壊する帝国』『先生と私』『十五の夏』あたりだろうか。
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ファンとしては『私のマルクス』『甦る怪物 私のマルクス ロシア篇』『同志社大学神学部』『紳士協定 私のイギリス物語』『亡命者の古書店 続・私のイギリス物語』あたりもサイコーに面白い。
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そのうえで、本書は著者曰く「人生の中間報告」に位置づけられる本だそうだ。
というのも、本書は『自壊する帝国』などで決定的に重要な人物として登場する、佐藤優の自伝ファンにはお馴染みのサーシャ(アレクサンドル・ユリエビッチ・カザコフ)との関係が中心に描かれているからだ。
サーシャと佐藤優は(読者の傍目には)単なる友人という枠を超えた深い精神的なつながりを持った信頼関係を構築しているが、1994年5月に「ちょっとした行き違い」から音信が途絶えている(本書で描かれている)。しかし佐藤優はその後、鈴木宗男事件に巻き込まれて懲役刑になり、もちろん外務省も辞め、その後職業作家として活動するという大きな環境変化に遭遇する。そして佐藤優とサーシャは2012年3月に再会するのである。
サーシャは神学や哲学、そして政治に深くコミットした後、一度政治の世界から距離を置いてビジネスに生きようとするのだが(そのせいで1994年5月の「ちょっとした行き違い」が起こる)、その後、ジャーナリストなどを経て、また政治の世界に深くコミットするようになる――親プーチン派として。
したがって本書は、佐藤優の自伝ノンフィクションであるが、ロシア・ウクライナ情勢も巻末の「あとがき」を始めふんわりと臭ってくる。
この辺が耐えられるなら、佐藤優の他の自伝ノンフィクションと同様、めちゃくちゃ面白い。