単に書名が格好良くて何となく気になったから買ったのだが、中身は「SF思考」の本。
わたし自身SF思考の本を何冊か読んでいるし、世の中的にも最近よくSF思考が取り上げられているが、SF思考と言われた際に採られているアプローチは大きく「SFプロトタイピング」と「SFバックキャスティング」の2つであると思う。
まずSFプロトタイピングとは、本書によれば以下の3つの要素を備えていることである。
- 未来像や別様の可能性を「フィクション」の形式で作り出すこと
- 作品制作が最終目的ではなく、別の目的を持ってSF作品を作ること
- クリエイター以外の専門家が関与して創作が行われること
次に「SFバックキャスティング」とは、これも本書の定義を紐解くが、「フォアキャスティング」と対になる言葉であり、現在を起点に未来を予測するのではなく、未来を起点として逆行的に現在までの道すじを考えることである。ただ、ここまでだと単に「バックキャスティング」だ。本書で言うSFバックキャスティングとは、正確には以下の要素を備えていることである。
- 未来ストーリーを参考にして「今やるべきこと」を考えること
- 単にビジネス的に逆算するのではなく、逆算のプロセスでもSF要素を介すこと
- フィクションを要素分解し、一部でも現実化して社会を変えようとすること
要するに、発想を遠くに飛ばして未来像を描く「SFプロトタイピング」と、その未来像を現実と接着して着地させる「SFバックキャスティング」をセットにした概念がSF思考である。そして更にSF思考を使いこなすためにアプローチを細分化すると、「つくる→あらわす→つかう→なる」のサイクルで表せるようだ。
- SFプロトタイピング
- ステージA:未来ストーリーを「つくる」――世界観とプロットをざっくり考える
- ステージB:未来ストーリーを「あらわす」――世界観とプロットを「SF作品」に仕上げる
- SFバックキャスティング
- ステージC:未来ストーリーを「つかう」――フィクションを要素分解し、現実とのリンクを探す
- ステージD:未来ストーリーに「なる」――フィクションから生まれたアイデアを現実化する
未来起点で将来像を「つくる」ことをして、SF作品に「あらわす」ことでその将来像を豊かにイメージし、将来像を現在に引き戻すのだが、引き戻す際に安易に矮小化せず、現在地とSF作品の接点を探していく(SF作品を「つかう」)、そしてSF作品で表された未来ストーリーを部分的にでも現実化していく(SFの世界に「なる」)――これがSF思考だと本書は説く。
個人的には、なかなかわかりやすくて「なるほど!」と思えた。
他のSF思考の本よりも、わかりやすくてイメージしやすいような気がする。