世界線や時間軸は共有されているが、直接的なストーリーやメインキャラクターの繋がりはほぼ無く、前作を未プレイでも問題なく遊べるんだけどね。
プロローグ部分のストーリーはこうだ。
主人公(ショーン)は、シアトル郊外で父(エステバン)や弟(ダニエル)と三人暮らしをしている16歳の男子学生である。母親が失踪したり、メキシコからの移民で周囲や隣人から差別を受けたりといった問題もあるが、父親は自動車整備士としてきちんと働いて地域社会に溶け込んでおり、幸せな日々を送っていたと言えるだろう。しかしある日、ハロウィンのために準備していた手製の血糊をダニエルが隣人にかけてしまったことが原因で、ショーンはダニエルに代わって隣人と口論し、その過程で揉み合いになり隣人を失神させてしまう。そしてたまたま居合わせたパトロール中の警官が(血糊を見て)殺人現場と勘違いしてショーンとダニエルに銃を突きつけ、さらには騒動に気づいて詰め寄った父親を射殺してしまう。これにダニエルが絶叫した瞬間、ダニエルの念力的な超能力が発生・暴発し、現場は何かが爆発したような大惨事になり、その結果警官も死亡してしまう。大混乱に陥ったショーンは、とても説明し切れるものではないと思い、気絶したダニエルを抱えてその場を逃げ出してしまう。ショーンとダニエルは事件の重要参考人として警察から追われることになり、一度逃げ出したからには今さら信じてもらえないだろうと、父親の生まれ故郷であるメキシコのプエルト・ロボスを目指し、逃亡者として長い旅を続ける決意を固める――という感じである。
元々は「兄弟が2人で旅をするロードムービー的なストーリー」とだけ聞いていたが、実際ははるかにシリアスだった。
ショーンは本当に可哀想で、警官に父親が射殺されるのも、「アメリカそのもの」とも言える人種差別問題・移民問題の文脈で整理されるべきものだと思う。警官はまだ若手だったようだが、黒人やメキシカンは怖いという思い込みがあるから、ハロウィン→血糊の連想に気づかないし、止めに入っただけの父親に急に発泡するような事態になる。一方、このストーリーが(プロローグだけでも)本当に難しいのは、こうした理不尽で抗いがたい暴力や不幸に晒されたショーンが、生き延びるために、そして弟を守るために、窃盗や暴行といった罪に手を染めなければ事態を打開できない……という選択に迫られる点である。ショーンは、たまたま持っていた、父親から貰った数十ドルのお小遣いと、同級生とのパーティーのために準備した手荷物(ポテチ・缶ビール数本・ブランケット等)だけを手に逃げ出しているし、メキシカンというだけで片田舎では色眼鏡で見られるのだ。
弟も難しい立場で、わずか9歳にして父親を失い、母親のことは知らず、逃亡生活中は兄からアレもコレも駄目だと言われ、ストレスを溜めている。一方、ゲームのプレイヤーキャラクターはショーンであり、わたしからすると自然にショーンに感情移入するので、「ダニエルもっと言うこと聞けよ!」とつい思ってしまう。
前作『ライフイズストレンジ』以上に、シリアスで、胸が詰まる。しかしプレイする手は止まらない。
これは大傑作なので、ぜひ『ライフイズストレンジ』と併せてプレイしてほしい。質の良い映画を観終えたような余韻がある。