『カリギュラ2』@Switch

元々『カリギュラ』というゲームやアニメがあるのだが、そちらは未プレイ&未試聴。

まあ2からプレイしても問題なかった。

主人公たちが生きる世界は、実はリグレットと呼ばれるバーチャルアイドルが作ったメタバース的な仮想世界(リドゥ)である。一度この仮想世界に閉じ込められると、現実世界の記憶を失い、また戻る方法もなく、仮想世界の中での生活を否応なく続けることになる。しかし現実世界では寝たきりのような形になっており、現実の体は衰弱を続けているため、このまま仮想世界で暮らしていても先はない。遠くない未来に現実世界の肉体が死んでしまうだろう。その事実に気づいてしまった高校生の主人公と仲間たちは、現実世界への「帰宅部」を結成し、帰還を目指す――というアウトライン。

わたしが思う本作の面白さは大きく2点あり、ひとつは戦闘システムだ。キャラクターがある行動(攻撃・防御・回復・アイテム使用など)を選ぶと、直近の行動結果をシミュレーションできるのである。相手も味方も色々な行動を取るので、そのタイミング次第で、攻撃が当たったり当たらなかったり、回復が効果的だったり間に合わなかったり。雑魚キャラは適当にボタン連打しても勝てるが、強敵だと色々とタイミングを調整しないと勝てない。この辺は他に類例のないゲームシステムで、なかなか面白い。

もうひとつはこの世界観である。実際のところ、この仮想世界で意識だけを動かしている人々は、強制的に連れ込まれたものではない。いや、正確には主人公は記憶を失っていてよくわからないのだが、他の人間はNPCを除いて全員、現実世界で耐え難い辛い経験をして、それで仮想世界に逃げ込んだのである。仮想世界では現実世界とは異なる自分になることができる。年齢も、容姿も、性別も、性格も、何もかも新しく再設定して再デビューできるのだ。仲間たちは全員、一度は現実世界に嫌気が差して、この仮想世界を自ら選び取ったのである。しかし主人公と交流を続け、仲間たちはその辛い現実世界に戻ることを決意するのである。

この辺は若干ペルソナシリーズに似ているところがあるが、ペルソナシリーズよりも彼らの悩みはかなり深く、また解決もしていない。

このあとストーリー的なネタバレを含むので、ネタバレOKな人だけ読み進めてください。

もう一度書く。ネタバレします。

続けよう。

例えば、この仮想世界で「風紀委員」としてルールを守ることを自分にも他人にも厳しく強要する少年がいる。彼は、何かの意思決定をすることが極端に苦手である。一度迷い出すと、横断歩道を渡るか否か、ランチで何を食べるかも選べなくなる。そんな彼は、現実世界では正義感に溢れた優秀な警察官だった。凶悪犯と対峙した彼は、誰かを救うために拳銃の引き金を引き、そして射殺してしまう。それは一般的には正しい行いであり、正しい判断と言えるだろう。しかし現実世界での彼は、マスコミに報道されて後ろ指をさされ、人権団体や心無い人々から批判され、恋人とも破局し、出世コースからも外れた。そんな彼は、警察官として「ルール」を守ることの重要性は信じ続けたが、自分で「判断」をすることができなくなる。そして仮想世界に逃げ込み、「風紀委員」として誰かが定めたルールを無批判に受け入れ、他人にも頑なに適用しようとする。そうすれば、「判断」をしなくて済むからだ。そして全員がルールを守っていれば、犯罪も起こらない。

例えば、この仮想世界で「チャラ男」として楽しく毎日を過ごすことに強い執着を見せる少年がいる。個人的には、彼のバックグラウンドが最も刺さったのだが、彼は何と前作『カリギュラ』のモブキャラである。16歳かそこらで『カリギュラ2』ではなく『カリギュラ』の仮想世界に軽い気持ちで入り込んだ少年は、16歳から20歳という極めて重要な時間を、仮想世界で無為に過ごすことに使ってしまった。少年は、青春も恋愛もバイトも経験していない。受験勉強や大学の講義を受けていないどころか、そもそも高校に通っておらず中卒だ。それどころか、起き上がるまでに数ヶ月、まともな生活ができるまで数年のリハビリ期間を要した。一方、同年代の友人たちは皆フツーに青春っぽいことを一通り終えて、高校生活どころか大学生活も概ね終えて、就職先を決めている人までいた。そして自分は『カリギュラ』の仮想世界を解き放つような主要キャラではなく、ただただ無為に時間を奪われただけのモブキャラなのである。そんな自分に絶望し、何ともう一度『カリギュラ2』の仮想世界に逃げ込んでしまうのである。彼は今回、現実世界に戻った後は、他の人間以上に体力が衰えているだろう。前回と今回で仮想世界に奪われた期間は、リハビリを含むと10年を超えると思う。まだ20代なのに……。

他にも色んな人がいる。自分が女性であることの違和感に耐えられず仮想世界に逃げ込み「少年」として振る舞う女性。夢だったアイドルとして成功するが今度はアイドルであることに疲れて仮想世界を選んだ女性。などなど……。

実は、まだラスダン(ラストダンジョン)でクリアしていないので、最後どうなるかはわたしもまだ知らない。

見たいような、見たくないような……。

あまり売れていないのかもしれないが、わたしは面白いと思う。