黒田高祥+仁藤砂雨『豚の復讐』1〜7巻

「顔が豚に似ている」とのことで幼少時から酷いイジメに会ってきた少年が、特別なチートなどが何もない状態で異世界にタイムスリップする。早速死んだかと思いきや、豚顔だったためオークに仲間だと認められ、しかも何故かオークと意思疎通できて、何ならエルフの女性とちょっと良い感じになって束の間の幸せを掴んでいた。しかしその幸せも長くは続かない。実は自分たちをイジメてきたクラスメート34名も異世界転生しており、しかも彼/彼女たちは皆チート能力を身に付けていたのである。その結果、クラスメートたちはあっさりと魔王を倒したが、新たな支配者として君臨していた。そしてちょっとした小遣い稼ぎ、肉便器探しの感覚で主人公を救ってくれたオークの村を半滅させ、良い関係になっていたエルフを犯して殺していたと。それで主人公はオークたちと共に34名のクラスメートを皆殺しにすることを誓う――とまあ、そんな感じのアウトライン。

まあ動機はよくわかる。

けれど、何だろう、残虐描写ばかりが先に立ってあまりカタルシスがない。

誤解されたくないのは、元クラスメートたちに同情しているわけではないのである。このクラスメートたちは、全員が全員よくもまあここまでのクズがひとつのクラスに集まったなというぐらいの圧倒的なゴミクズ集団である。政治家の息子などもいるから標準以上の偏差値の高校だと思うんだけどね。

でも、それとは別に、なーんか「ブッ殺せて良かった!」というカタルシスはない。

何だろうなー。一言で表現すると「描写力」ってことになるんだろうけど。