『無職転生』シーズン1前半@Netflix

全11話。分割2クールで作られた。

最近は「なろう系」をバカスカ観ていて、これもその一環。

以前は正直なろう系を馬鹿にしていたのだが、今は違う。わりと楽しんでいる。

わたしは前々から思っていたことなのだが、なろう系は「トレンディドラマ」なのだ。

トレンディドラマを知らない方もいるだろうが、一般的にはバブル時代およびそれ以降90年代あたりの、女性の願望を具現化したドラマと介される。

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なろう系も、まさに弱者男性の願望を具現化している。転生したら美しい外見とチート能力を身につけて皆からチヤホヤされて、特に求めてもいない&選ぶ甲斐性がないから選ばないという選択をしているのに次から次へと女が寄ってきてチヤホヤしてくれて、もちろん友達もいっぱいできるし師匠的な存在も都合良く現れ、異世界に転生したのに言語や思考回路や秩序様式は変わらず、生活にも困らない。物語として「適度な苦難」も与えてくれるが、異世界に転生してまで努力なんてしたくはないから、努力はしない、ないし努力している描写は最小限。

ただ、形としては願望を具現化したものかもしれないが、なろう系の読者や視聴者が本当に自身の願望を投影して現実逃避しているかと問われると、流行り始めた頃のコアユーザーはそうかもしれないが、多くの人は違うのではないかと思う。少なくともわたしは違う。わたしは「考えることが少ない」「考えなくても楽しめる」というのがひとつのメリットなのだと思う。転生というテンプレがあり、転生後の設定やストーリーにもテンプレがあり(テンプレを「外す」アプローチすらテンプレ的である)、ただキャラクターや展開はテンプレであってもしっかりとワクワクさせてくれる。「細かいことは良いから楽しむべきことを楽しむ」というシンプルな楽しみ方ができるのである。

世の中の疲れた弱者男性はワープア状態で社会から搾取されて疲れているだろうし、顧客に無理難題を押し付けられて疲れているだろう。無職ニートもそれなりに社会や将来への不安を感じて疲れているのではないか。そんなときに、何も考えずただ楽しむことができる。

これはトレンディドラマと同じである。キムタクと松嶋菜々子が主役にクレジットされたラブストーリーで、最終的に2人が結ばれることを疑う人はいない。しかし愛への障壁がないとつまらないから、適度な波風は立てていく。しかし必ず結ばれることはわかる。その安心感があるから、読者は楽しめる。まるでジェットコースターである。絶対に安全であることは保証されているが、適度なスリルは欲しいのだ。

本題に入ろう。しかし説明は一言で足りる。本作は最も典型的ななろう系である。そしてトレンディドラマの最も正統的な継承作なのだ。