恵三朗+草水敏『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』15〜16巻

フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(15) (アフタヌーンコミックス)

フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(15) (アフタヌーンコミックス)

フラジャイル(16) (アフタヌーンKC)

フラジャイル(16) (アフタヌーンKC)

病理医という、ややマイナーな医療従事者を主人公とした医療ドラマなんだが、面白すぎてヤバい。

15〜16巻では「未来は始まっている編」として、ゲノムや製薬と病理の関係に踏み込んだストーリーが展開される。無様な延命治療を拒絶する祖母、祖母に生きていてほしいと願う孫、16年も「緩和ケア医」として患者の最期を看取ってきた医師、遺伝子創薬に命を賭ける研究者、医療の酸いも甘いも噛み分けた製薬マン……どことなく病理医の存在感が薄い気もするが、個人的には15〜16巻は過去最高の面白さだと思う。何度読み返し、何度涙したかわからない。

ドラマ化したらしいけど、まず漫画で、ぜひ読んでほしい。大推薦の漫画。

17巻まだかなー。

ゆうきまさみ『ゆうきまさみ初期作品集 early days』全2巻

文字通り、ゆうきまさみの初期作品集。

ゆうきまさみはサンデーの申し子ぐらいに(勝手に)思っていたから、そもそもゆうきまさみが小学館じゃないところでバンバン仕事をしていたことすら初耳だっというか何というか。

しかし、これはファングッズだなあ……。物凄く巧いんだが、やはり古さを感じるというか。

灰原薬『応天の門』1〜11巻

[まとめ買い] 応天の門

[まとめ買い] 応天の門

以前からAmazonで頻繁にレコメンドされていたのだが、どうも気が進まずこれまで読んでこなかった本。しかしいざ手に取ってみると非常に面白く、一気に全巻読破、そして二度三度と読み返している次第。

タイトルの通り、「応天門の変」を題材とした漫画、になるのだろう。

応天門の変って何だったっけという方はWikipediaを読んでいただきたいが、一言で書けば、平安時代に起こった政治事件であり、権力集中を目論んだ藤原氏による他氏排斥の動きだそうだ。

ja.wikipedia.org

本作も応天門の変が起こる前夜といったところが舞台である。主人公は少年時代の菅原道真で、準主人公が色男・優男として名を馳せる在原業平。鬼だの物の怪だの呪いだのが跋扈する時代において、リアリストたる菅原道真が(主に在原業平の依頼に基づき嫌々ながら)論理的に事件を解決していくといった「ミステリモノ」が縦糸、朝廷で勢力争いをしている藤原氏と伴氏の対立がだんだん深まっていく「政治モノ」あるいは「歴史モノ」が横糸となっており、ライトに読めるけど深読みもできる、一口で二度も三度もおいしい作品である。

絵柄も綺麗で、各話の間には監修者による平安時代のコラムもあり、このおかげで、一口で四度も五度もおいしくなっている。

続きが楽しみな漫画がまたひとつ増えた。

道満晴明『バビロンまでは何光年?』

バビロンまでは何光年? (ヤングチャンピオン烈コミックス)

バビロンまでは何光年? (ヤングチャンピオン烈コミックス)

道満晴明らしいというか、ヤングチャンピオン烈らしいというか、なかなか攻めた作品。

主人公は最後の地球人で、記憶喪失である。たまたまTシャツにバブと書かれていたからバブと呼ばれているが、おそらくこれが自分の名前ではないことはわかる。しかしそれ以外の記憶がほとんどない。そんな主人公を含めた3人組が、ポンコツ宇宙船で旅をする……というSFロードムービー漫画。エロあり、ギャグあり、シリアスありと、全体を通してシュールなんだが、そこまでわかりづらくもなく。絶妙のバランスだな。

道満晴明の作品はこれまで何回か読んできて、どうもハマり切れなかったのだが、これはガッツリ惹きつけられた。おすすめ!

ゆうきまさみ+とり・みき『土曜ワイド殺人事件』『新・土曜ワイド殺人事件』

新装版 土曜ワイド殺人事件 (ドラゴンコミックスエイジ)

新装版 土曜ワイド殺人事件 (ドラゴンコミックスエイジ)

新・土曜ワイド殺人事件 京都藁人形殺人事件 (ドラゴンコミックスエイジ)

新・土曜ワイド殺人事件 京都藁人形殺人事件 (ドラゴンコミックスエイジ)

ゆうきまさみは超絶お気に入りの漫画家なのだが、最新作『新九郎、奔る!』のモチーフが何と応仁の乱っつーことで、どうも地味だし「ふーむ」程度で読んでいた。しかしながら先日ふと思い立って真面目に読み返してみたら……やはり面白い! さすがゆうきまさみだ! ということで、またぞろゆうきまさみマイブームが復活し、Kindle化された昔の作品がないかなーとチェックしていたところ、本作を発見。

本作については存在は知っていたものの、実は読むのは初めてである。Wikipediaに書かれているように掲載誌としては相当不遇な作品であり、本屋で見かけた記憶もなかったから。

ja.wikipedia.org

絵柄を見ると、ゆうきまさみ的とも言えるし、とり・みき的とも言えるし、どっちなんだろう……と思っていたのだが、正解は「両方」である。詳しくは上記のWikipediaを確認してほしいが、どちらかが原作でどちらかが作画といった単純な割り切りではなく、もはや合作としか言いようのないほど複雑なプロセスを経て本作が出来上がっている。これは疲れそうだな。少なくとも仲が良くないと作れなさそう。

内容……というかギャグも、昔のゆうきまさみ的というか、とり・みき的というか、とにかく細かいギャグやパロディがふんだんに詰め込まれている。もう『鉄腕バーディー』や『新九郎、奔る!』といった最近の作品では細かいギャグをてんこ盛りにする手法は取ってないから、『究極超人あ〜る』のような初期作品が好きだった人には懐かしいんじゃないかな。

シネクドキ『エルフさんは痩せられない。』4〜5巻

エルフさんは痩せられない。 4巻 (ガムコミックスプラス)

エルフさんは痩せられない。 4巻 (ガムコミックスプラス)

エルフさんは痩せられない。 5巻 (ガムコミックスプラス)

エルフさんは痩せられない。 5巻 (ガムコミックスプラス)

主人公が勤務するマッサージ店に、異世界人のエルフが客として顔を出す。太りすぎで悩んでいると……。

そのため主人公はトレーナーとして、マッサージだけでなく運動や食事のアドバイスを始めることにした。しかし異世界と比べて人間社会の調理スキルは大変高いものであり、つまり人間社会の食べ物は大変に美味しいものであり、エルフはなかなか痩せられない。そうこうするうちに、ダークエルフやらオーガやら、他の異世界人にも体重管理・体型管理のアドバイスを始めることになる……とまあ、こんな感じのアウトライン。かなりブレイクしたので今さら説明する必要もないかもしれない。

この作品は、設定が秀逸すぎて逆に出オチ感があるので、2巻ぐらいで満足してしまい、3巻を読んで「まーこんなものか」と一旦購入を見合わせていた。しかし先日たまたま気が向いて1〜3巻を読み返したところ……とにかくめっちゃ面白い! 出オチとは無縁! ということで慌てて4巻と5巻を購入。やっぱり面白い。最初はピンと来なくても、ふとした拍子にハマることもあるから侮れない。

感想を書けていない漫画を100冊まとめて 第5弾

新しく手に取った作品71冊と、続刊29冊。

奥田亜紀子『ぷらせぼくらぶ』

ぷらせぼくらぶ (IKKI COMIX)

ぷらせぼくらぶ (IKKI COMIX)

これ昔から強烈に印象に残っている漫画(というか絵柄)だったのだが、持っていなかった。IKKIだったのか。わたしはIKKIを創刊号から買い支えた人間だが、そらIKKIはもう廃刊しているからノーマークだったわ。盗んだバイクで走り出したりバンド始めたりしないような中学生の、何とも言えない焦燥感みたいなものが詰まっていて、2013年の発売だが古さは全く感じない。逆に言うとわたしのような中年でも登場人物の気持ちは痛いほどわかる。時代に左右されない名作である。

小日向まるこ『アルティストは花を踏まない』

アルティストは花を踏まない (ビッグコミックス)

アルティストは花を踏まない (ビッグコミックス)

  • 発売日: 2019/03/29
  • メディア: Kindle版
第一次世界大戦後、ドイツ国境近くのフランスを舞台とした子供たちの物語。人々は戦争の爪痕に今なお苦しめられているが、少年モモは少年らしい健気さでもって周りの大人たちを少しずつ変えていく。しかしモモにはある秘密があって……という、よくできた映画のような完成度のプロットである。ぐんぐん引き込まれ、没入し、気づいたら『ショーシャンクの空に』を観たような、何とも言えない爽快さと気だるさの入り混じった……つまり良質の映画を一本観終えたような心持ちになっていた。これも年間ベスト級の傑作だが、紙媒体の発売は半年以上前か。こんなに漫画を買っているのに、気づかないものだなあ。

泰三子『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』8〜9巻

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(9) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(9) (モーニング KC)

  • 作者:泰 三子
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: コミック
今、最も続刊が待ち切れない作品のひとつだが、幸いにも作者は猛烈なスピードで新刊を出してくれる。作者&担当編集者のインタビューを読んだことがあるが、これまで漫画を本格的に描いたことがなかったのだが、警官あるあるを描きたいばかりに、とんでもないスピードでネームを上げてくるらしい。やはり「書きたいことがある」というのは技術云々よりも強い。コメディタッチとシリアスタッチのバランスも良く、基本的にコメディなのだが警察官という仕事上たまにシリアスな描写もあって、それがまたグッと来る。

その他……感想割愛!

おのでらさん『輝夜月ガチ勢の日常』、模造クリスタル『黒き淀みのヘドロさん』1〜2巻、模造クリスタル『ビーンク&ロサ』、三島芳治『児玉まりあ文学集成』1巻、三堂マツリ『ブラック・テラー』、詩野うら『有害無罪玩具』、早川パオ『まどろみバーメイド』1巻、井上智徳『CANDY & CIGARETTES』1巻、タナカカツキ『サ旅 ハパランダ編』、吉岡公威『てんぷる』1巻、平方イコルスン『うなじ保険』、桜井のりお『みつどもえ』全19巻、重野なおき『信長の忍び』1〜15巻、稲垣理一郎+Boichi『Dr.Stone』1〜12巻、派手な看護婦『団地魔女』、アキリ『ヴァンピアーズ』1巻、いちかわ暖『新しい上司はど天然』1巻、朋hiro『MuseGate Collection 短編集』1巻、奥田亜紀子『心臓』、阿部共実『潮が舞い子が舞い』1巻、伊藤いづも『まちカドまぞく』1巻、えぞぎんぎつね+阿倍野ちゃこ+DeeCHA『ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。』1巻、中野シズカ『にわにはににん』、中野シズカ『てだれもんら』1巻、オジロマコト『君は放課後インソムニア』1巻

信濃川日出雄『山と食欲と私』10巻、丈『宇崎ちゃんは遊びたい!』3巻、荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険Part8:ジョジョリオン』21巻、井上堅二+吉岡公威『ぐらんぶる』13巻、紀ノ目『ロジカとラッカセイ』3巻、小林有吾+上野直彦『アオアシ』17巻、グレゴリウス山田『竜と勇者と配達人』5巻、おのでらさん『コミケ童話全集』2巻、タナカカツキ『マンガ サ道』2巻、赤岸K+江口連+雅『とんでもスキルで異世界放浪メシ』4巻、カルロ・ゼン+東條チカ『幼女戦記』15巻、芝村裕吏+キムラダイスケ『マージナル・オペレーション』13巻、岩明均『ヒストリエ』11巻、小武『女主任・岸見栄子』4巻、とよ田みのる『金剛寺さんは面倒臭い』4巻、ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンスール』14巻、泰三子『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』8〜9巻、小山宙哉『宇宙兄弟』36巻、おいもとじろう『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』2巻、安部真弘『あつまれ!ふしぎ研究部』7巻、南勝久『ザ・ファブル』19巻、ヴァージニア二等兵『異世界居酒屋「のぶ」』9巻、豊田悠『パパと親父のウチご飯』11巻、栗山ミヅキ『保安官エヴァンスの嘘』9巻、久米田康治『かくしごと』9巻、鯨川リョウ『秘密のレプタイルズ』8巻、蛇蔵『天地創造デザイン部』4巻、しろまんた『先輩がうざい後輩の話』4巻

ゆうきまさみ『でぃす×こみ』3巻

でぃす×こみ(3) (ビッグコミックススペシャル)

でぃす×こみ(3) (ビッグコミックススペシャル)

1巻と2巻の感想を書いてから、だいぶ時間が経ってしまった。

incubator.hatenablog.com

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理由は明確で、単に感想を書くのを忘れていたのである。

本作は、ゆうきまさみがBLをモチーフに漫画を描くという意味ではかなり斬新だし、作中作・劇中劇というべきか、登場人物が描いたBL(つまりゆうきまさみが描いたものではない作品)というのを表現するために、ゆうきまさみではない別の漫画家にカラーの彩色を依頼するという、これまた斬新な取り組みだった。けどまあ、ゆうきまさみの各種の傑作に比べたら「佳品」ということになるのだろうなあ。面白いんだけど、イマイチ乗り切れなかったというか。

長田佳奈『つれづれ花譚』

つれづれ花譚 【かきおろし漫画付】 (主任がゆく!スペシャル)

つれづれ花譚 【かきおろし漫画付】 (主任がゆく!スペシャル)

大正時代の日常を描いた『こうふく画報』の続編。

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まあ大きな物語は何も起きないタイプの漫画なので、好きな人は好き、嫌いな人は嫌い、と好みがはっきり分かれるだろう。わたしは当然、大好物である。

なお、本作を読んで明治時代や大正時代に興味を持った方には、明治時代や大正時代の「和洋折衷」な魅力をストーリーとともに楽しみたいなら『ニュクスの角灯ランタン』を推薦したい。一方、とにかく服飾文化に没頭したいなら『日本のファッション 明治・大正・昭和・平成』を推薦したい。どちらも絶品。

日本のファッション 明治・大正・昭和・平成

日本のファッション 明治・大正・昭和・平成

新装改訂版 日本のファッション (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

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  • 作者: 城一夫(共立女子短期大学名誉教授),渡辺直樹
  • 出版社/メーカー: 青幻舎
  • 発売日: 2014/03/03
  • メディア: ペーパーバック
  • この商品を含むブログを見る

杉谷庄吾『映画大好きフランちゃん』

映画大好きフランちゃん NYALLYWOOD STUDIOS SERIES

映画大好きフランちゃん NYALLYWOOD STUDIOS SERIES

『映画大好きポンポさん』という極私的名作があるんだが、その続編。

前作『ポンポさん』は主に映画監督やプロデューサーにスポットライトが当たっていたわけだが、この『フランちゃん』はタイトルどおり、フランちゃんという女優志望のウェイトレスが主人公である(実質的には主人公は本作もポンポさんなのかもしれないが)。

女優志望なんだけど「貧乏だから」「経験がないから」「能力がないから」「チャンスがないから」と、色々と自分を慰めちゃうフランちゃん。

わかる。

わかるけど、この世の中、それを乗り越えて自分で自分にプレッシャーをかけ続けるしか、傑出することはできないんじゃないかと思う。上司や会社など、外部要因のせいにして愚痴をこぼすような余地はここにはない。

あ、誤解されると嫌なので予め補足しておくが、わたしは外部環境のせいにして愚痴をこぼすことも、待遇が釣り合わないと愚痴をこぼすことも、凡庸であろうとすることも、何の否定もしない。全部その人の自由だ。わたしだってやる。しかし凡庸であることを自分自身で良しとしておきながら、凡庸な待遇に文句を言うのは、わたしは違うと思う。例えば、わたしはホリエモンもZOZOの前澤も好きな人間ではないが、社会にイノベーションを残した偉大な人間だと思う。彼らは他人から色々と言われているが、死に物狂いで傑出したアウトプットを残した結果、傑出したリターンを得た。それで何の問題もないではないか。ケチをつけるのは嫉妬・僻みの類であろう。

繰り返すが、インプットもアウトプットもスループットも凡庸で、リターンだけ傑出するなどという都合の良い世界線は、わたしは基本的に存在しないと思う。コネやラッキーも含めて自分の実力であるわけだし、仮に短期的に「都合の良い世界線」に移動できたとしても、数年で落ち着くべきところに落ち着くだろう。このフランちゃんだってそうだ。大変かもしれないし、愚痴を言いたくなることもある。理不尽なこともある。しかし、仮にそうだとしても結局は自分が傑出するしか成功に至る道筋は存在しないのである。

こっちも面白い。おすすめ。

高浜寛『ニュクスの角灯』6巻

ニュクスの角灯 (6) (SPコミックス)

ニュクスの角灯 (6) (SPコミックス)

角灯と書いてランタンと読む。角灯ランタン

「長崎とパリを舞台に描く明治アンティーク浪漫」というのはAmazonの作品紹介に書かれていた煽り文句そのままだが、こういうのを読むと、世界中を取り込んでなお「らしさ」を失わない日本の美というか美意識は凄いなと感心してしまう。平安、鎌倉、室町・戦国、江戸、明治、大正……と、その都度違っており、溜め息が出てしまう。といっても、これなんかは海外の人から見たら一括りで「ジャポニズム」なんだろうね。我々がヨーロッパの時代や地方の細かな区別がつかないように。わたしはとりわけ、明治・大正浪漫と呼ばれる日本文化と西欧文化が入り交じる感じが非常に好きで、この作品なんかは読むだけで眼福である。

……と、やや脱線したが、本作もこれで最終巻。途中、個人的には「誰が主人公なんだ?」と混乱するというか、どこに焦点を当てて読めば良いか迷うところがあったのだが、「この時代そのもの」を描いていたと思えば、それもまた頷けるアプローチである。

高浜寛という漫画家は非常に稀有だと思うので、また次の作品にも期待したい。

余談

本作を読んで、明治・大正に萌えちゃった方は、長田佳奈の『こうふく画報』と『つれづれ花譚』を読みましょう。

こうふく画報 (主任がゆく!スペシャル)

こうふく画報 (主任がゆく!スペシャル)

つれづれ花譚 【かきおろし漫画付】 (主任がゆく!スペシャル)

つれづれ花譚 【かきおろし漫画付】 (主任がゆく!スペシャル)

あとは、極私的名作『日本のファッション 明治・大正・昭和・平成』だね。

日本のファッション 明治・大正・昭和・平成

日本のファッション 明治・大正・昭和・平成

新装改訂版 日本のファッション (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

新装改訂版 日本のファッション (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

  • 作者: 城一夫(共立女子短期大学名誉教授),渡辺直樹
  • 出版社/メーカー: 青幻舎
  • 発売日: 2014/03/03
  • メディア: ペーパーバック
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早良朋『へんなものみっけ!』1〜4巻

普通の役所勤務から博物館へ出向することになった公務員の主人公。最初は戸惑うも、だんだん博物館の魅力にハマっていく……というアウトラインか。

いわゆるお仕事漫画とも、動植物あるある漫画とも言えるが、個人的にはけっこう気に入った。

丁寧に続けてほしいと思う一方で、地味なのでもう少し「食い付き」の良いギャグやキャラクターも配置したら良いんじゃないかと思いつつ、まあそんなことしたら本作の魅力がスポイルされてしまうな、と他人ながら要らぬ心配をしてしまう。良い作品なので、作者が満足するまで描き切ってほしい。

相澤いくえ『モディリアーニにお願い』1〜4巻

美大に通う3人の青年を中心とした青春群像劇。

美大・芸大を舞台とした漫画作品としてすぐに思い出すのは『ハチミツとクローバー』と『神戸在住』であるが、パッと見の雰囲気は『神戸在住』に近い。リア充っぽくない主人公が、過去や現在の様々な苦しみと向かい合いながら日々を過ごしていく様子が、ざらついた筆致で描かれていく(実はハチクロもリア充漫画とは対極にある話なんだが、この辺を語り出すと日が暮れるので別の機会に)。

『神戸在住』と『モディリアーニにお願い』、どちらの作品も読んでいてわたしの心の深いところと共振する感覚がある。揺さぶるのである。『神戸在住』はわたしの中でのオールタイム・ベスト級の漫画なのだが、この作品が完結する頃には、本作も『神戸在住』と並び立つ極私的傑作になるのかもしれない。

なお、『神戸在住』において阪神・淡路大震災が大きなモチーフであり、いやテーマへと昇華しているのと同様、本作においては東日本大震災が大きなモチーフである。この共通点が、あくまで「たまたま」なのか、相澤いくえの『神戸在住』に対する返歌や本歌取りのようなものなのか、わたしにはよくわからない。ただ、件の震災が多くの人にとって人生を左右するほどの大きな出来事だったことはわたしにもよくわかる。

incubator.hatenablog.com

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和山やま『夢中さ、きみに。』

夢中さ、きみに。 (ビームコミックス)

夢中さ、きみに。 (ビームコミックス)

稀に登場する、何が面白いのか上手く説明できないがとにかく面白い作品、って奴。

上手く説明できないって書いたけど、絵柄やコマ割りや台詞回しといった個々の技術は凄く高い。

まあとりあえず一読してくださいよ、というのが正解かな。↓に試し読みページがあります。

www.kadokawa.co.jp

blog.t-kougei.ac.jp

松田舞『錦糸町ナイトサバイブ』全3巻

錦糸町ナイトサバイブ(1) (コミックDAYSコミックス)

錦糸町ナイトサバイブ(1) (コミックDAYSコミックス)

錦糸町ナイトサバイブ(2) (コミックDAYSコミックス)

錦糸町ナイトサバイブ(2) (コミックDAYSコミックス)

錦糸町ナイトサバイブ(3) (コミックDAYSコミックス)

錦糸町ナイトサバイブ(3) (コミックDAYSコミックス)

色気ゼロのロリ女が、夜の蝶になるんやーと、と言っても六本木や新宿歌舞伎町ではなく錦糸町という「ビミョー」なところに進出する。当然キャバ嬢として雇われるわけもなく主人公は途方に暮れるわけだが、たまたま、昔馴染みのおっさんと再開し、そのおっさんは夜間診療の歯医者を経営していたのでした……というところからスタートする漫画。日常コメディ、なのかなあ。ジャンルは説明しづらいが、漫画としてはよくまとまっていて、非常に面白かった。

けど3巻で完結。スッキリ終わらせたと見ることもできるが、もう少し続けてくれても良かったような気もする。