速水螺旋人『大砲とスタンプ』1〜7巻

軍オタによる架空世界の漫画。

といっても、「兵站」すなわち軍隊の補給や事務を担当するような部署が主人公である。

なのでいわゆる戦争漫画とは全く違うのだが、しかししっかりと戦争を描いていることには違いない。

架空世界の戦争漫画という意味では、最近『幼女戦記』が流行っているが、こちらも(味わいは違えど)しっかり面白い。

グレゴリウス山田『中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク』

中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク

中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク

最近『竜と勇者と配達人』というファンタジー世界の仕事にフィーチャーした漫画が極私的に大ブレイク中である。(世間的にもわりにブレイクしている)

incubator.hatenablog.com

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この漫画は、『竜と勇者と配達人』を描いている作者が、その前に同人誌として描いたものである。実在した職業らしいのだが、なかなか奇天烈なものも多い。

とにかく物凄く面白くて、大推薦。

おのでらさん『コミケ童話全集』

コミケ童話全集 (中経☆コミックス)

コミケ童話全集 (中経☆コミックス)

童話をベースにしながらも、「コミケあるある」や「オタクあるある」を織り込んだネタ漫画。

Web漫画や同人誌をそのまま出版したようなのは、新しい才能を世に問うという意味では良いんだけど、編集や出版社の怠慢という気もしないでもない。できれば、その後も継続的に支援して芽吹かせてほしいんだけどね。この手の出版をしておきながら、全然プロになっていない漫画家は結構いると思う。

冨樫義博『HUNTER×HUNTER』34巻

HUNTER×HUNTER モノクロ版 34 (ジャンプコミックスDIGITAL)

HUNTER×HUNTER モノクロ版 34 (ジャンプコミックスDIGITAL)

泣く子も黙る大傑作漫画。

この漫画は2つの意味で超有名である。ひとつは、圧倒的な面白さ。もうひとつは、圧倒的な作者の遅筆ぶり。遅筆というか、もう真面目に描き続けることができないんだよね。しばらく連載すると、我慢できなくなって、ネトゲするために数ヶ月から数年間に渡って休載している。なので完全にノーマークだったのだが、いつの間にか35巻が出ていた。なので、まずは34巻を急いで購入して読了。

長らく続いたキメラ=アント編が終わって、さてどうなるかと思っていたが、やっと暗黒大陸編の全体像がわかってきた。個人的には、キメラ=アント編よりも面白くなりそう。

入江亜季『乱と灰色の世界』全7巻

乱と灰色の世界 コミック 全7巻完結セット

乱と灰色の世界 コミック 全7巻完結セット

ハルタを代表する漫画家、入江亜季の代表作。

とにかく絵も話も宝石箱のような作品。キラキラして、自由奔放で、感情が揺さぶられる。

ストーリーの説明は止めておこう。書くだけ野暮だ。

大傑作。

シネクドキ『エルフさんは痩せられない。』2巻

エルフさんは痩せられない。 2巻 <電子版限定特典付き> (ガムコミックスプラス)

エルフさんは痩せられない。 2巻 <電子版限定特典付き> (ガムコミックスプラス)

エルフだのダークエルフだの人狼だのといったファンタジー世界の住人と何故か知り合い、その人たちのダイエット問題や肩凝り問題を解決してあげるマッサージ師の物語……という何とも表現のしようのない設定。

2巻も相変わらず……なんだけど、まあこれはこれで良いと思う。本作はストーリーを楽しむというよりは、エルフの腹肉や、ダークエルフの尻肉、エルフが美味しそうにポテトを食べる様など、そういうのを眺めてニヤニヤする漫画である。いわばフェチ漫画なのである。

菅森コウ『駄能力JK成毛川さん』3巻

駄能力JK成毛川さん(3) (ビッグコミックススペシャル)

駄能力JK成毛川さん(3) (ビッグコミックススペシャル)

「ちんげちらし」だの「リモコン隠し」だのといった駄能力妖怪が人間社会に溶け込んで暮らしているという設定のコメディ漫画。けっこう面白かったのだが、3巻で完結。まあ最近ただのハーレム漫画化しつつあったから、このあたりでスッパリ完結して良かったと思う。

次回作に期待。

小出もと貴『サイコろまんちか』1〜3巻

サイコろまんちか(1) (月刊少年ライバルコミックス)

サイコろまんちか(1) (月刊少年ライバルコミックス)

サイコろまんちか(2) (月刊少年ライバルコミックス)

サイコろまんちか(2) (月刊少年ライバルコミックス)

サイコろまんちか(3) (月刊少年ライバルコミックス)

サイコろまんちか(3) (月刊少年ライバルコミックス)

同じ作者の『アイリウム』を購入した時に、表紙が気になって1巻だけ購入したところ、面白すぎて一気読みした次第。これまでに読んだ漫画の中でも屈指だね。しかも最近「おすすめ漫画100選」だの「今年読んだ漫画50選」だので毒にも薬にもならない作品を紹介してアクセスとアフィを稼ぐブログが山ほど出てきているが、この作品を見たことはほとんどない。つまり漫画好きからもけっこう見逃されている傑作という意味で、わたしの「隠し玉」のひとつと言って良い。

というか一言で書く。

大推薦!

コミュ力が低くリア充とは真逆にいる、ちょっとイタい女子高生が、心理学を勉強して世の中の色々なことに上手く対処できるようになった(と自分で思い込んでいる)ため、自分の好きな男の子を巻き込んで心理学研究会を立ち上げる……というアウトライン。けっこう真面目な心理学の解説と、クズいギャグと、主人公の自虐ネタが織り交ぜられ、もうとにかく圧倒的に面白い。なぜこれがマイナーなまま(半分打ち切りのような形で)完結してしまうのか。解せぬ。

奈良一平『29歳独身中堅冒険者の日常』1巻

29歳独身中堅冒険者の日常(1) (週刊少年マガジンコミックス)

29歳独身中堅冒険者の日常(1) (週刊少年マガジンコミックス)

中堅冒険者がダンジョンで腹ペコの少女を拾って、成り行きでそのまま育てる的な感じになるのだが、この少女が実はサキュバスで、夜になると大人の女性の姿に変わる……というゆるふわファンタジー漫画。

設定的にはよくある感じだが、わりに面白いと思う。

三宅乱丈『イムリ』22巻

イムリ 22【電子特典つき】 (ビームコミックス)

イムリ 22【電子特典つき】 (ビームコミックス)

クライマックスの描写がスラムダンクの山王戦レベルに長い。

良くも悪くも息の詰まる展開なんだが、さすがに疲れてきた。

どう決着するのかなー。全く想像つかん。

赤岸K+江口連+雅『とんでもスキルで異世界放浪メシ』1巻

とんでもスキルで異世界放浪メシ 1 (ガルドコミックス)

とんでもスキルで異世界放浪メシ 1 (ガルドコミックス)

正直、なろう系は個人的には飽和状態というかぶっちゃけ「お腹いっぱい」という感じなのだが、世間的にはまだまだ需要があるとみなされているのか、毎月のように発売されている。

なろう系のテンプレートは、ある日突然異世界に転生もしくは召喚され、現代の「記憶」を持って無双するというものだ。その際、転生するときに何らかの「チート能力」(勇者属性だったりLV999だったり高レベルの魔法を使えたりする等)を有しているというのもテンプレートである。一方、地味だったり下らない能力しか持っていないのだが、それを逆手に取ってやはり無双する……というのも根強い人気があるらしい。

本作は、いま挙げた最後の例そのままであろう。ネットスーパーという謎能力なのだが、要するに現代のネットスーパーにアクセスして商品を買うことができるというもので、異世界では極めて価値の高い精製された塩や故障を安価に購入でき、錬金術のようにさくっと大金を得ることができる。また、生姜焼きのタレなんかも簡単にゲットできる。そのおかげで伝説級の魔物を従者に迎えて異世界で無双できる……とまあこういう具合である。

パッと読んでそれなりの面白さがあるのは事実だが、まあ読み返す類のものではないよね。

コトヤマ『だがしかし』9巻

だがしかし(9) (少年サンデーコミックス)

だがしかし(9) (少年サンデーコミックス)

ほたる、サヤ師、新キャラのハジメという3人のヒロインが上手くハマって、展開に奥行きが出てきたように思う。田舎で新しいキャラクターが出てこないから、第2部の試みは良かったのではないだろうか。全員かわいいと思います、ええ。

ヤマシタトモコ『建国日記』1巻

違国日記(1) (FEEL COMICS swing)

違国日記(1) (FEEL COMICS swing)

親をなくして、母親の妹(少女小説家)に引き取られる女子中学生。

この小説家は、葬式の場での大人たちの汚さをこれ以上この女子中学生に見せたくないという気持ちが働いて衝動的に引き取るが、基本的には人嫌いで愛想もなく、そして何より姉(つまり女子中学生の母親)のことを憎むほどに大嫌いである。だから女子中学生に愛着も持てない。持てないんだけど引き取った手前、上手く共同生活を送るしかないという。

女子中学生も、叔母のそういうところを理解しながら、引き取られていく。

けど暗い感じではない。手探りで、お互いの距離感を見つけようとしているというか。

なんというか、ヤマシタトモコはこの手の「赤の他人と突然一緒に暮らす」という設定が好きだね。『ドントクライ、ガール』もそうだし、すぐに思い出せないけど休みの間だけ家出して他人と住むみたいな話もあった。好きというか、表現者として描かざるを得ないのかな。ここにリビドーがあるのかもしれない。他者との邂逅?

ヤマシタトモコ『WHITE NOTE PAD』2巻

WHITE NOTE PAD(2) (FEEL COMICS swing)

WHITE NOTE PAD(2) (FEEL COMICS swing)

ネタバレしますのでご注意を。

男女が入れ替わる……しかもお互い何の接点もない「可愛い女子高生」と「冴えないオッサン」が入れ替わるという、特に女子高生の立場からすると本当に救いのない設定。お気楽な女子高生をしていたのに冴えないオッサンの中に入り込み、そんでもって仕事なんて全然できない。汚いチンコを触らなければならない。自慰の感覚まで覚えてしまう。

しかも元に戻らない。入れ替わったまま完結してしまう。

うーん、何というのだろうか。

ヤマシタトモコらしいというか。

希望らしきものは一応、示される。しかしこれを希望と言って良いものか。

うーん、けっこうな問題作だよなー。

余談

本作を読み終えて、藤野千夜+志村貴子『ルート225』を思い出した。『ルート225』は姉弟が別世界にスリップしてしまうという話で、人格交換とは違うんだけどね。

でも思い出してしまった。

決して救われていないんだけど、差し当たりの希望らしきものは提示されるところが何とも。

読後感ってやつか。

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ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』5巻

さんかく窓の外側は夜 5 (クロフネコミックス)

さんかく窓の外側は夜 5 (クロフネコミックス)

わたしはたとえ好きな作家でもBLを読むことは基本的にできないのだが(実際ヤマシタトモコのガチなBLは読んでないし、志村貴子のBLも無理だ)、これは一応BLという括りにはなるのだろうが、BLらしさは少ない。自分の霊的な存在を触られてビクッとなる感覚と性的快感を意図的に混同して描写しているところは前々から巧いなーと思っていたが、最近はその描写も慣れてきたというか控えめになってきたというか。

5巻のラストでは、宗教団体に利用されるがまま霊能力を使ってきた女子高生が、(誰かの裏切りによって?)自分が思ったよりも危険な立場に置かれていることを自覚し、しかもそれに対して「裏切り者を見つけて復讐しよう」というモードになっていたところが非常に興味深い。6巻では、物語がけっこう動くかも。